電磁探査による効率的な地下水塩淡境界深度測定法

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要約

電磁探査によって測定した地盤のみかけ導電率と地下水の塩淡境界深度と間には高い相関があり、近似曲線を作成することによって、コイル間隔を変化させることなく任意の地点の塩淡境界深度を推定することができ、効率的な調査が可能となる。

  • キーワード:地下水,淡水レンズ,塩淡境界深度,電磁探査
  • 担当:農工研・農村総合研究部・地球温暖化対策研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7200
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

地下水中の塩淡境界深度を推定するためのループ・ループ法による電磁探査(送信・受信にループ状の電線(コイル)を用いて地盤の導電率を測定する方法)は、従来法では一地点あたり複数のコイル間隔によって測定を行い、逆解析によって地盤の導電率の層状構造を推定する。しかし特に潮汐の影響を受けやすい小島嶼においては短時間に多数の地点の測定を行う必要がある。電磁探査によって得られる地盤の見かけ導電率に影響を及ぼす要素は、地質構造が均質であれば地下水位と塩淡境界深度であり、地下水位が場所によって大きく変化しないフィールドでは地盤の見かけ導電率によって塩淡境界深度を推定できると考えられる。 本研究は電磁探査法の測定時間の短縮のため、地下水の塩淡境界深度と、複数のコイル間隔によるデータから従来法によって推定した塩淡境界深度および測定によって得られたそれぞれの見かけ導電率を比較し、手法の適用性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 琉球石灰岩が分布する沖縄県多良間島における、地下水観測孔における深度1m毎の電気伝導度の実測によって求められた地下水中の塩淡境界(ここでは海水と淡水の中間値である2,000mS/m)深度と、電磁探査(使用機材:Geonics社製EM34-3)によって求められた従来法(コイル間隔:10、20、40m、水平ダイポールモード、3層構造による逆解析)による1層目の導電率境界深度とは高い相関(R2=0.96)を持つ(図2)。
  • 各コイル間隔の測定で得られた見かけ導電率と、地下水中の塩淡境界深度は、コイル間隔40mで最も高い相関を持ち、近似曲線についての相関係数(R2=0.92)は1.の結果と比べて同程度である(図3)。
  • 2.で求めた近似曲線を用いれば、塩淡境界が未知の地点においても、1通りのコイル間隔の測定のみで、地下水中の塩淡境界深度の推定ができる(図4)。
  • 測定時間は従来法で1地点あたり約20分であるが、本手法ではコイル間隔を変えることによるケーブルのつなぎ替え、ゼロ点調整が不要になるので、1地点あたり2~3分で測定を行うことができる。

成果の活用面・留意点

  • 本技術は多良間島以外の島嶼においても、地下水位が場所によって大きく変化せず、帯水層が均質な石灰岩層から構成されていれば適用可能である。
  • コイル間隔が大きくなるにつれて対応する測定可能深度は深くなるが、地質状況や地下水質にも左右されるので、適用するコイル間隔・測定モードはそれぞれの現場において最適なものを求める。
  • 本技術は石灰岩が分布する地域において、島嶼における淡水レンズ水資源賦存量調査や、沿岸部における塩水浸入状況調査などへの活用が期待される。

具体的データ

図1 ループ・ループ法による電磁探査の測定イメージ

図2 従来法によって求められた塩淡境界深度と地下水観測孔で測定された深度 2,000mS/m

図3 コイル間隔別の電磁探査による見かけ導電率と地下水観測孔で実測された深度 2,000mS/m

図4 観測孔実測結果を,コイル間隔40m の電磁探査結果からの推定で補完して得た電気伝導度2,000mS/m 等標高線図(沖縄県多良間島)

その他

  • 研究中課題名:農村地域における健全な水循環系の保全管理技術の開発
  • 実施課題名:沿岸扇状地流域における環境同位体等を指標とした地下水涵養・流出量の評価手法の開発
  • 実施課題ID:421-a-00-002-00-I-09-8206
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2008~2010年度
  • 研究担当者:石田 聡、土原健雄、吉本周平、皆川裕樹、増本隆夫、今泉眞之