塩水地下水浸入がある下水処理水の利用のための塩分低下対策の検討手順

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要約

塩水地下水浸入がある下水処理水を農業用水として再利用するための塩分低下対策の検討手順である。処理系統、塩化物イオン濃度および下水流量の調査に基づき、管更生案とバイパス案の選択に利用できる。

  • キーワード:下水処理水、塩化物イオン濃度、管更生、バイパス
  • 担当:農工研・農地・水資源部・用水管理研究室
  • 代表連絡先:電話029-838-7550
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

沖縄本島南部に位置する島尻地区は、下水処理水を再生し農業用水として生食用野菜等の栽培に利用しようとしている我が国で最初の地区であり、海外の基準の適用性を検討し、安全性に問題の無いことを確認している。しかしながら、その下水処理水は、海面標高下の破損した下水管等からの塩水地下水浸入により塩化物イオン濃度が高く、栽培にそのまま利用するには支障がある。そのため、作付けするあらゆる作物の生育に支障のない200mg/L以下に塩化物イオン濃度を下げるための塩分低下対策を検討する。具体的には、塩分調査を行い、既設管内面を樹脂コーティングし塩水地下水浸入を防ぐ管更生案および塩化物イオン濃度が低い幹線下水を分離して処理するバイパス案と塩水地下水浸入がある一部の管を更生する併用案を比較する。この事例を踏まえ、一般的に利用できる塩分低下対策の検討手順を提案する。

成果の内容・特徴

  • 島尻地区における塩分低下対策については、塩分調査の結果、塩化物イオン濃度が低い小禄幹線と南風原幹線の下水を分離して那覇浄化センターで処理するバイパス案(図1)と小禄幹線に流入する一部の下水管の管更生の併用案が可能である。これと塩水地下水浸入の可能性のある下水管(図2)の破損部分全てを対象とする管更生案を比較したところ、将来塩化物イオン濃度が上昇する可能性が低いことから、バイパス案と一部の管更生の併用案が適当である(表1)。
  • これらを踏まえた塩分対策の検討手順については、次のとおりである。①下水処理水の処理系統、幹線下水管の塩化物イオン濃度および下水流量の概査を行う。②処理系統を配管の変更等で分けることができない場合は、管更生案を検討する。③処理系統を分けることができ、塩化物イオン濃度の低い幹線下水管で必要な下水の日流量が確保できる場合は、バイパス案を検討する。④処理系統を分けることができ、塩化物イオン濃度の低い幹線下水管で必要な下水の日流量が確保できない場合で、バイパス案と一部の管更生の併用案で必要な下水の日流量が確保できる場合は、バイパス案と一部の管更生の併用案を検討する。⑤処理系統を分けることができ、塩化物イオン濃度の低い幹線下水管で必要な下水の日流量が確保できない場合で、バイパス案と一部の管更生の併用案で必要な下水の日流量が確保できない場合は、管更生案を検討する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 塩分低下対策の検討手順は、新たにバイパス案を選択肢に加えるものであり、南西諸島や瀬戸内地域等において、塩化物イオン濃度が高い下水処理水を農業利用する場合に活用できる。

具体的データ

図1 島尻地区における幹線下水管のバイパス案

図2 塩水地下水浸入の可能性のある下水管の分布状況

表1 島尻地区における管更生案とバイパス案・一部管更生併用案の比較

図3 塩分低下対策の検討手順

その他

  • 研究中課題名:農村地域における健全な水循環系の保全管理技術の開発
  • 実施課題名:下水処理水の農業利用に係る施設整備のための制度並びに用水管理の手法及び体制の解明
  • 実施課題ID:421-a-00-009-00-I-08-8904
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2007~2008年度
  • 研究担当者:山下正、友正達美