航空撮影オルソ画像を用いた耕作放棄田の調査手法

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要約

航空撮影オルソ画像を用いた耕作放棄田の省力的な調査手法である。画像を目視判読して耕作放棄田であると判断できる水田と耕作放棄田である可能性のある水田を抽出し、後者のみを現地踏査して耕作放棄田であるか否かを確認し、現地調査の省力化を図る。

  • キーワード:耕作放棄田、航空撮影、オルソ画像、ADS40、目視判読
  • 担当:農工研・農地・水資源部・土地資源研究室
  • 代表連絡先:電話029-838-7670
  • 区分:農村工学
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

2008年度に農林水産省により全国規模で耕作放棄地全体調査が実施された。本調査は、市町村全域のすべての農地を踏査し、耕作放棄地の位置と状況を一筆毎に把握するものである。多大な労力を要するため、現地調査の省力化が課題となっている。そこで、福島県の中山間地(旧東和町)において、デジタル航空センサーADS40による水稲生育初期(6月上旬)の航空撮影オルソ画像(地上解像度20cm)を用いて耕作放棄田(不作付けでかつ保全管理が行われていない水田)がどの程度目視判読できるかを調査し、航空撮影オルソ画像を用いた耕作放棄田の調査手法を提案する。

成果の内容・特徴

  • 水稲生育初期の地上解像度20~30cm程度の航空撮影オルソ画像(アナログの航空写真から作成されたオルソ画像を含む)を用い、目視判読により「画像に灌木の樹冠らしきものが認められる水田(水田A)」、「画像の色調がまだら(ランダムな明暗)で、かつ植被部が暗緑色である水田(水田B)」および「画像の色調はまだらであるが、植被部は暗緑色ではない水田(水田C)」を抽出する(図1図2)。水田Aと水田Bは耕作放棄田であると判断できるので、この時点で耕作放棄田と確定する(図3)。
  • 水田Cは耕作放棄田である可能性があるが、多年生雑草が繁茂している不作付田(自己保全管理水田)や多年生雑草がかなり混入している永年牧草作の転作田である可能性もある。この水田Cのみを現地踏査して耕作放棄田であるか否かを確認する(図3)。
  • 以上のようにして調査を行えば、市町村全域の水田を全て踏査する必要がなく、耕作放棄田の調査を省力化できる。

成果の活用面・留意点

  • 耕作放棄地の現地調査を行う市町村担当者が活用できる。
  • 水稲生育初期に撮影されたオルソ画像を用いる必要があるが、耕作放棄田の雑草が枯れている時期でなければ、他の時期に撮影されたオルソ画像でもある程度は調査に利用できると考えられる。ただし、耕作放棄田の判読性は図1とは異なる可能性がある。
  • 耕作放棄田の調査のためだけに航空撮影を行うことはコスト的に難しいが、別途、水土里情報利活用促進事業等で水稲生育初期の最新の航空撮影オルソ画像が整備されていれば、それを調査に利用することができる。
  • 水田団地全体が原野化しているために水田か林地か画像から判断できない場合には、例えば、国土交通省のオルソ化空中写真ダウンロードシステム(http://orthophoto.mlit.go.jp/)より、1975年頃に撮影された航空写真オルソ画像をダウンロードして参照すると良い。

具体的データ

図1 耕作放棄田の目視判読性

図2 耕作放棄田・不作付田の現地写真(上)と航空撮影オルソ画像(下)

図3 耕作放棄田の調査手順

その他

  • 研究中課題名:持続的利用可能な高生産性土地基盤の整備技術の開発
  • 実施課題名:衛星データ等を利用した耕作放棄地分布の情報更新支援技術の開発
  • 実施課題ID:412-b-00-004-00-I-09-5405
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2009~2010年度
  • 研究担当者:福本昌人、小川茂男、吉迫宏