畑作物のカドミウム汚染を防止する土層構造

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要約

カドミウムに汚染されている農地において、土壌水の上向き補給を妨げず、表層土の汚染と作物のカドミウム吸収を防止する土層構造は、根の深い畑作物のカドミウム汚染防止のための低コストの基盤整備技術につながる。

  • キーワード:土壌汚染、客土、防根透水シート、吸着
  • 担当:農工研・農村環境部・水環境保全研究室
  • 代表連絡先:電話029-838-7545
  • 区分:農村工学
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

現在は、水田のカドミウム汚染土壌への対策は客土が基本である。しかし、畑作物を対象にした場合、比較的根が深いため厚い客土が要求されるとともに、土壌水の上向き補給によって下層からカドミウムが表層に補給されるという問題も懸念される。炭は、重金属を吸収する能力があり、身近に入手できる素材としていくつかの試験結果が報告されている。炭のカドミウム吸着機能を活用し、汚染された土壌で栽培された作物(ダイズ又はムギ)のカドミウム吸収を抑制する土層構造を提案する。

成果の内容・特徴

  • 土層構造は、カドミウムで汚染された農地土壌の上に、カドミウムを吸着する担体(粉炭)を所定の厚さで敷きつめ、更に防根透水シートを1層敷いた上に、清浄な土壌を作土として客土するものである(図1)。
  • 作土の下のシートは、作物根がカドミウムで汚染された下層へ伸張するのを防止する機能を有する透水性の繊維である。また、吸着担体の層は、下層から上昇する土壌水中のカドミウムを吸収し、作土への移行を防止するものである。
  • この土層構造を再現したワグネルポット(1/2,000a)で、ダイズ2作の栽培試験を行った結果、防根透水シートの下面に厚さ1 cmの粉炭層を設置した場合でも、作土のカドミウム汚染と作物のカドミウム吸収を防止することが可能であることがわかる(表1図2)。ここで、試験に使用した汚染土壌は、水田表土から採取した細粒強グライ土で、カドミウム含有量は、13.2 mg/kg DW(0.1M HCl抽出)である。なお、試験期間内の粉炭層への吸着量から推定した土壌溶液中のカドミウム濃度は、約21.7μg/Lである。
  • 栽培試験で使用した粉炭は、カドミウムの吸着量が一定量(Mc)を超えると浄化効率が低下する。試験に使用した粉炭を使用した場合、一定期間、吸着効果を発揮させるために必要な粉炭の層厚は、土壌水中のカドミウム濃度と土壌水の上向き補給量との関係から決定される。客土の耐用年数を考慮し、50年間十分な吸着効果を発揮するための必要厚は、図3の曲線のとおり算定される。

成果の活用面・留意点

  • カドミウムの吸着担体は、炭以外を使用することも可能である。
  • 作土への上向き補給水量は、地形、土壌、気象その他灌漑方法によって異なるため、これらの条件に応じて土層構造の設計諸元を決定する必要がある。
  • 現地において、営農及び作物生育上必要な作土の厚さ及び施工性並びにコストに対して具体的な検討を行うことで、技術の適用性を判断することが必要である。

具体的データ

図1 カドミウム汚染防止の土層構造

表1 ポット試験の条件

図2 栽培試験後のダイズ子実のカドミウム含有量(全分解)

図3 25 年耐用のための粉炭の必要層厚

その他

  • 研究中課題名:持続的利用可能な高生産性土地基盤の整備技術の開発
  • 実施課題名:畑作物の重金属汚染防止のための低コスト基盤整備技術の開発
  • 実施課題ID:412-c-00-005-00-I-09-5503
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:白谷栄作、久保田富次郎、濵田康治、人見忠良、三浦麻(福岡大)