動電学的手法による粘土質水田土壌中のカドミウム除去

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要約

動電学的手法(EK法)は、粘土質水田土壌中のカドミウムと同族元素である亜鉛の移動や除去に有効である。

  • キーワード:EK法、重金属汚染土壌、カドミウム、動電学的手法、交換性塩基
  • 担当:農工研・農村環境部・水環境保全研究室
  • 代表連絡先:電話029-838-7546
  • 区分:農村工学
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

近年の国際的な食品安全基準の見直しを背景として、国内においても食品および土壌中のカドミウム(Cd)濃度の低減が大きな課題となっている。Cd汚染農地対策技術として、これまでに吸収抑制策やファイトレメディエーション、土壌洗浄法等の研究が進められているが、多様な現場条件に対応するため対策メニューを充実させる必要がある。本研究では、工場跡地等の重金属汚染土壌の原位置浄化技術として開発が進められてきた動電学的手法(EK法)に着目する。EK法は、汚染土壌に電圧を印加して土壌中の重金属イオンを電位勾配に沿って移動させ除去を図る工学的手法である。これまで、我が国の水田土壌を対象としたEK法の有効性は確認されていないので、日本のCd汚染が高い2ヶ所の粘土質水田土壌を対象として、EK法によるCdおよび同族元素であるZnの除去の可能性をカラム試験により検討する。

成果の内容・特徴

  • EK法による土壌浄化試験のために、図1に示すカラム試験装置を用いる。供試土壌として農地土壌では高いCd濃度(13 mg kg-1)の細粒灰色低地土壌Aと、比較的低いCd濃度(0.42 mg kg-1)をもつ細粒強グライ土壌Bを用いる。
  • 陰極槽に希硝酸を投入し、陰極液のpHを酸性(2~3程度)に維持することで、重金属で汚染された粘土質水田土壌中のCdやZnは、陰極側に移動し一部は除去される(表1)。
  • 土壌中に広く存在する重金属を考慮すると、EK処理によるCdの除去に先行する元素と順序はFe>Mn>Zn>Cdである(図2)。この傾向は土壌Bでも類似しており,Fe>Mn>Zn(>Cd)の順であった.そのため、Cdの除去を図る場合、土壌中のFe、MnおよびZnの含量がCdの除去効率に影響する可能性がある。
  • Cuの除去(図2)は緩慢に進行するのでCdの除去を目的としたEK処理を行った場合、微量要素の一つであるCuの0.1M HCl抽出量の増減は小さいことが予想される。
  • EK処理を施すことにより土壌pHの顕著な低下がすすみ、Ca、MgおよびKなどの交換性塩基および可給態リンが失われる(表2)。このことから、EK処理土壌において作物栽培を行う場合は、処理土壌の低pHの矯正や交換性塩基および燐肥の投入等の土壌改良が必須である。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、小型カラム試験の結果をまとめたものであり、除去率は実験条件や通電時間等によって変わることに留意する必要がある。
  • EK法は、一般にCECが高い土壌やアロフェンを多量に含む火山灰土壌には適さないとされている。

具体的データ

表1 カラム内における Cd と Zn の 0.1M HCl 抽出量分布の変化

図1 実験装置

図2 重金属の積算回収除去率

表2 EK処理前後の土壌化学性の変化

その他

  • 研究中課題名:農地と農業水利システムにおける微量物質の移動過程の解明
  • 実施課題名:水田の営農活動に伴う重金属の排出特性の解明
  • 実施課題ID:421-a-00-005-00-I-09-8506
  • 予算区分:交付金研究、産学官連携強化(農研機構)
  • 研究期間:2009~2011年度
  • 研究担当者:久保田富次郎、人見忠良、濵田康治、白谷栄作、三重野俊彦(元富士エンバイロン)、塩濵圭治(淺沼組)