サトウキビ糖蜜由来のバイオエタノール蒸留残渣液の農地施用

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

サトウキビ糖蜜由来のエタノール蒸留残渣液はカリ含量が高い。カリ成分の1/3を残渣液で代替した場合、トマトとハツカダイコンの輪作において、トマトの収量とハツカダイコンの株重に悪影響は見られない。

  • キーワード:エタノール蒸留残渣液、農地利用、カリ、窒素、土壌環境
  • 担当:農工研・農地・水資源部・農地工学研究室
  • 代表連絡先:電話029-838-7553
  • 区分:バイオマス、農村工学
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

サトウキビ糖蜜からバイオエタノールの製造に向けて、宮古島市では実証運転を開始している。1L(リットル)のバイオエタノールを生産する場合、その15~20倍の蒸留残渣液(以降残渣液とする)が発生する。持続的なバイオエタノール生産のためには、この黒色残渣液の安価かつ安全な処理、再利用技術の開発が不可欠となり、資源循環の観点からは農地への還元が一つの方法である。そこで、残渣液を農地施用する可能性を検討するために、残渣液の理化学性を明らかにし、有機態窒素の無機化実験と野菜類に対する圃場施用実験によってその肥料成分の有効性を検証する。

成果の内容・特徴

  • 表1に示すとおり、残渣液はpHが低く、色度が高く、BOD、COD、TOCが大きく、有機物が多量に含まれている。また、残渣液のカリ含量は高く、ほとんど水溶性であり、良好なカリ源になると推測される。
  • 宮古島にあるエタノールプラントの年間残渣液排出量は約9000tであり、主要作物のサトウキビを除く畑地に年間8t/haを施用できれば、発生する残渣液をすべて農地還元できる。基礎実験として、カリ吸収量が比較的多いトマト(2008.5.12~8.29)とハツカダイコン(2008.9.8~11.12)の輪作において、残渣液のカリ肥料の1/3代替を試みる(カリ肥料相当の1/3、トマトでは5.8t/ha、ハツカダイコンでは2.3t/haの残渣液を施用する。単体肥料を用いて各試験区のNPK投入量を揃える。)。その結果、カリ成分の1/3を残渣液で代替した場合、トマトの収量とハツカダイコンの株重には悪影響は見られない(図1,図2)。つまり、残渣液はカリ肥料の代替が可能であり、化学肥料の削減に貢献できる可能性がある。
  • トマト栽培における窒素代替量の残渣液(150t/ha)農地還元の可能性を検討するために、残渣液中の有機態窒素の無機化特性を明らかにする。100gの島尻マージ土壌に30mg窒素相当量の硫安と残渣液を施用し、30°Cでインキュベーション実験を行った結果、図3に示す通り30日以内のインキュベーションでは、残渣液施用区の土壌中の硝酸態窒素濃度は、無施用区よりも低い。その理由は、残渣液のC/N比と塩素イオン濃度が高いため、微生物の増殖あるいは硝酸化成菌の増殖阻害であると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 残渣液のC/N比が高いため、多量に農地に施用する場合は、作物に窒素飢餓を起こす可能性がある。そのため、作物に影響を与えない早い段階での施用が推奨される。
  • 今回の実験は単年1作の結果であり、更に反復実験による検証が必要である。また、土壌や作物の影響を考慮した残渣液の最適施用量についても実証試験が必要である。
  • 実用化、普及のためには、残渣液の運搬と施用方法についても検討が必要である。

具体的データ

表1 残渣液の理化学特性

図1 残渣液の施用がトマトの生育に及ぼす影響

図2 残渣液の施用がハツカダイコンの生育に及ぼす影響

図3 土壌中の硝酸態窒素の動態変化

その他

  • 研究中課題名:畜産廃棄物、食品廃棄物等の有機性資源の循環的利用のためのシステム整備技術の開発
  • 実施課題名:バイオエタノール廃液の処理・利用技術と変化バイオマスの農地還元技術の開発
  • 実施課題ID:411-e-00-103-00-I-09-3304
  • 予算区分:委託プロ(バイオマス)
  • 研究期間:2007~2011年度
  • 研究担当者:陳 嫣、凌 祥之