農村地域の防災情報を共有するためのプロトタイプ地理分散協調サーバ

要約

国際標準化機構の情報規格に基づき、プロトタイプ地理分散協調サーバ(ジオウエブ)を探索的に試作し、インストール方法のマニュアルを整備する。農村地域の防災関係機関の情報共有の仕組みに活用でき、水利施設に係る防災訓練や施設点検の利用に道を開く。

  • キーワード:農村防災、ジオウエブ、分散協調、国際標準化機構、オープンソース
  • 担当:農工研・農村総合研究部・広域防災研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7535
  • 区分:農村工学
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

一般のウエブサーバは、衛星データや地図データ、災害状況マップなどの情報を配信しても、正しい地理的位置(緯度経度)で情報が重ならない。各々のサーバが地理情報の国際標準(ISO/WMS、WFS等)に準拠すれば、相互に協調してジオウエブとして運用されるようになる。得られた情報は末端ユーザのブラウザ(ウエブページの閲覧ソフトウエア)上で正しい位置で重なる。この仕組みを用いて、洪水や地すべり等の農村防災分野で独自情報を持つ各々の行政部局や消防、土地改良区などの農業災害関係機関がジオウエブを立ち上げ、災害時に情報を共有するとともに、平時の防災訓練等での利用を促進する。

成果の内容・特徴

  • 防災情報共有のためのジオウエブ(図1)は、製作費のかからないオープンソース・フリーウエアソフトウエア群を用いて設計し、試作している(図2、図3)。試作にあたっては、非常に多数のソフトウエア、ライブラリ群をネット上から探し、それらの各バージョンとインストール手順を試行錯誤することにより、インストール方法を決定する。このプロセスをマニュアル化することにより、農村工学分野でジオウエブに関するノウハウが初めて蓄積されている。
  • 試作したプロトタイプシステムを用いて、関係機関内において技術の理解を深めてもらうため、マニュアルとして整備するとともに、インストールが簡単にできるようなライブラリ群CD-ROMを作成している。
  • 用水路などの施設点検に便利なように現場のデジカメ写真など、特定の位置情報のある点データをデータベースに登録するためのユーザインタフェース機能を有している。登録データは、ジオウエブとして末端ユーザのブラウザ上で正しい緯度経度上に表示される(図3の雨量グラフは現場のデジカメ写真に置き換えることができる)。
  • 農村地域の防災分野において、農業水利施設、社会基盤施設(道路、送電線等)や降雨レーダ画像等もジオウエブの配信をすれば、防災情報の共有、さらに想定される災害時データを用いて施設管理者や住民の防災訓練に利用できる可能性がある(図4)。

成果の活用面・留意点

オープンソースのソフトウエアを動作させるのに必要なライブラリ類は、必要なバージョンが、ネット上から削除される恐れがあるので、ライブラリ群CD-ROMを作成した。地すべり地形分布図(防災科技研)や基盤地図情報25000WMS配信サービス(近畿中国四国農研センター)は、ジオウエブのウエブ・マップ・サービス(WMS)配信を実験的に行っているため、協調利用が可能である。ジオウエブをインターネットに接続する際、LAN環境を事前に調査し、ファイアーウオールなどの情報セキュリティ対策、データベースの情報流出対策が行われているかをチェックする必要がある。

具体的データ

地理分散協調サーバ・ジオウエブの 概念図ジオウエブの土地改良区での利用

ジオウエブサーバー側の管理者の確認画面積算雨量グラフの表示例

その他

  • 研究中課題名:地域防災力強化のための農業用施設等の災害予防と減災技術の開発
  • 実施課題名:衛星データ等を利用した農地の湛水被害域把握手法の開発
  • 実施課題ID:412-c-00-004-00-I-10-6404
  • 予算区分:交付金研究、文科省宇宙利用促進調整委託費、強化研究費
  • 研究期間:2008~2010 年度
  • 研究担当者:山田康晴、川本治、井上敬資、正田大輔
  • 発表論文等:1) Yamada,Y.(2010) International Archives of the Photogrammetry, Remote Sensing
                         and Spatial Information Science, Vol. XXXVIII, Part 8, Kyoto Japan: 243-247