局所荷重や繰返し荷重が作用するパイプラインの三次元変形特性

要約

パイプ基礎地盤に土嚢などの異物が存在する場合、均一な地盤条件と比較して、パイプに約3倍の局所的なひずみが発生する。さらに、交通荷重のような繰返し載荷を受けると、パイプの変形量が大きく増大して、安全性が低下する。

  • キーワード:パイプライン、局所荷重、繰返し荷重
  • 担当:農工研・施設資源部・土質研究室
  • 代表連絡先:電話029-838-7575
  • 区分:農村工学
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

基幹的な農業用のパイプラインの多くは道路下に埋設され、大きな交通荷重を受けている。さらに幹線のパイプラインは、高い内水圧や地震時の動水圧、土圧の集中や数百万回に及ぶ交通荷重の影響などを受けて、耐用年数以内でも漏水や破損などの機能障害に至る場合が多い。そうした場合、営農に大きな支障を来すだけでなく、道路の陥没や周辺施設への二次被災が生じることも少なくない。パイプラインの構造設計では、地盤条件や土圧に応じて、適正なパイプラインの強度を定める手法が提示されているが、実際の複雑な地盤条件や交通荷重が作用するような場合は、正確に評価することが困難である。
本研究では、実際の幹線パイプラインが受ける複雑な地盤・荷重条件を反映した模型実験と三次元数値解析を実施して、パイプラインの変形特性を解明する。

成果の内容・特徴

  • 直径800mm、長さ5mのパイプ(遠心力成形のFRPM管、3種)を現場の複雑な条件(パイプ下部に異物(土嚢)を設置)を反映した地盤(砂)に埋設して、交通荷重を想定した70万回(交通量区分N5(大型自動車250台以上1000台未満、舗装設計施工指針)における疲労破壊輪数から換算すると7年に相当)の繰返し載荷実験を実施した(図1)。パイプ底部の支持地盤が均一な場合には、パイプに大きなひずみは生じず安定しているが、土嚢などの異物が埋設されている場合には、土圧が集中し、均一な場合に比べて約3倍のひずみが発生する(図2)。
  • 図1に示した模型実験の三次元有限要素解析を実施した。パイプ周辺部に地盤と剛性が異なる土嚢などの異物がある場合、地盤の沈下や土圧の変化などから三次元的な変形が発生して、図3のように異物周辺に局所的なひずみが集中する。このことから、パイプの横断面での二次元的な構造的安全性だけでなく三次元的なひずみ分布を考慮した性能照査が不可欠であることが示唆される。
  • パイプの繰返し載荷試験(70万回)の結果を図4に示す。一定の荷重振幅(34-49kN/m)を繰返し与えているが、載荷回数が増えるにつれて、パイプの変形が増大している。70万回載荷時には、載荷初期時と比較して、平均鉛直たわみ率(鉛直変位量/パイプの直径)が約15%増加している。
  • パイプラインの長期的な安全性を判断するためには、土嚢などの異物がパイプに与える影響や繰返し荷重による疲労劣化などを適切に評価しなければならないことが分かる。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、交通荷重が作用するパイプラインの性能照査や改修を行う上での設計・施工の留意点として活用することができる。

具体的データ

模型実験断面図

パイプ(A断面)の円周方向 ひずみ分布

解析結果

繰返し載荷試験結果

その他

  • 研究中課題名:地域防災力強化のための農業用施設等の災害予防と減災技術の開発
  • 実施課題名:施工過程を考慮したパイプラインの安全性評価手法の開発
  • 実施課題ID:412-c-00-007-00-I-10-6704
  • 予算区分:交付金研究
  • 研究期間:2008~2010年度
  • 研究担当者:有吉 充、毛利栄征、松島健一、堀 俊和
  • 発表論文等:1) 有吉ら(2008)第45回地盤工学研究会講演集: 1309-1310