メタン発酵消化液の輸送・散布計画の策定支援モデル

要約

本モデルは、メタン発酵消化液を液肥として農地還元する際に必要となるメタン発酵施設から農地への輸送・散布作業をシミュレーションする。計画策定者は、これによって種々の条件による試算を容易に行うことで、最適な輸送・散布計画を立案できる。

  • キーワード:消化液、農地還元、計画策定支援、プログラム、シミュレーション
  • 担当:バイオマス利用・地域バイオマス利用
  • 代表連絡先:電話 029-838-7508
  • 研究所名:農村工学研究所・資源循環工学研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

メタン発酵技術は、生活排水汚泥、家畜ふん尿や食品廃棄物などの含水率の高いバイオマスから燃料となるバイオガスを生成する有効なバイオマス利活用技術のひとつである。メタン発酵施設ではバイオガスとともに原料とほぼ同量の消化液が生成され、消化液は、バイオマス中の窒素等の肥料成分を含有し、地域の農地で液肥として利用することが望まれる。しかし、消化液は水分が多くかさばり、メタン発酵施設から農地への輸送・散布に多くの労力や機材を要する。また、肥料の需要が時期的に偏在するため、計画的な貯留も必要である。このため、個々の地域に適した消化液の輸送・散布計画の策定を支援するシミュレーションモデルを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本成果は、メタン発酵施設と消化液を散布する個々の農地ブロックとの距離や当該農地ブロックの面積、散布開始日等を入力することで、個々の農地ブロックへの日々の消化液の輸送・散布作業をシミュレーションして、日々の散布量や労務量等を算出するモデルである。なお、「農地ブロック」とは、距離その他の条件から一体的に扱える農地のまとまりを示す。本モデルの主な入出力項目は、表1に示すとおりである。
  • 算定条件として消化液の散布方法は、散布車を用いる方法あるいはかんがい用水とともに流し込む方法を農地毎・散布機会毎に設定できる。散布車を用いる方法は、表2に掲げる人員・機材を1ユニットとして輸送・散布作業を算定する。かんがい用水とともに流し込む方法の場合、バキューム車及び同運転手を1ユニットとして取り扱う。
  • メタン発酵施設と農地との中間に消化液を貯留する槽(中間貯留槽)を設ける場合の輸送・散布にも対応して算定可能である。中間貯留槽を設ける場合には、モデルは図1に示すようにメタン発酵施設から中間貯留槽への輸送作業に対応する中間貯留槽輸送モデルと中間貯留槽から農地への輸送・散布作業に対応する輸送・散布モデルの2段階構成となる。
  • 中間貯留槽を設ける場合には、まず輸送・散布モデルで農地への輸送散布作業を算定し、その算定結果をもとに中間貯留槽輸送モデルで中間貯留槽への輸送作業を算定する。
  • 試算例を図2に示す。輸送・散布に日々必要な人員・機材の数量の他、消化液の貯留槽の容量が算定結果として得られる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:メタン発酵施設の導入を検討する市町村担当者や事業者及び彼らから検討委託を受けたコンサルタントの技術者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:318市町村が公表したバイオマスタウン構想では、178市町村がメタン発酵技術の導入を組み込んでいる。本成果は、それらのメタン発酵施設の計画・設計や運営に役立つ。
  • その他:実証プラントでの消化液の輸送・散布データでモデルの妥当性を検証している。ある市での輸送・散布計画策定に関して問い合わせがあり、本成果の適用を図っている。また、本モデルは、ホームページからダウンロードして利用が可能にする予定である。

具体的データ

表1 モデルの主な入出力項目図2 モデルの試算例(冬季に消化液の液肥利用がない地区の試算例)
図2 モデルの試算例(冬季に消化液の液肥利用がない地区の試算例)

(山岡 賢)

その他

  • 中課題名:地域資源を活用したバイオマス循環利用システムの開発
  • 中課題番号:220e0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2009~2011年度
  • 研究担当者:山岡 賢、柚山義人、中村真人、清水夏樹、折立文子
  • 発表論文等:1)山岡ら(2009)農業農村工学会資源循環部会論文集、5:41-55.
                       2)山岡ら(2011)農業農村工学会論文集、273:89-96.