コンクリート開水路の補修・補強工事に伴うCO2排出量による環境負荷評価

要約

施設の補修・補強工事のライフサイクルCO2(LCCO2)を簡易に算定する手法を開発し、環境負荷の評価に利用できることを示す。この簡易な算定手法を用いて各種工法の累計CO2排出量を比較することにより、環境負荷に配慮した工法を見出すことができる。

  • キーワード:コンクリート開水路、LCC、単一劣化予測モデル、CO2排出量
  • 担当:水利施設再生・保全・施設機能・性能照査
  • 代表連絡先:電話 029-838-7576
  • 研究所名:農村工学研究所・施設工学研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、農業農村整備事業における農業水利施設の改修工事にあっては、施設の全面的な更新工事ではなく、既存ストックを活かした補修・補強工事の実施割合が増加してきている。また、土木分野においては、構造物のライフサイクルにおける二酸化炭素の排出量(ライフサイクルCO2(LCCO2))による評価がひとつの環境評価指標として挙げられている。このため、コンクリート開水路の補修・補強工事で排出されるCO2量を算定するための簡易な手法を開発し、環境負荷評価への利用可能性について検討を行う。また、コンクリート開水路で施工されている各種の補修対策工法に伴う累計CO2排出量を比較することにより、環境負荷の観点から評価を行う。

成果の内容・特徴

  • コンクリート開水路の補修・補強工事で排出されるCO2量を算定するために、2009年に作成したライフサイクルコスト(LCC)算定システムに、施工単価表を参考として産業連関表から算出されているCO2排出原単位を組み入れる。この新たな算定手法を用いることによりLCCO2の算定が簡易になることから、環境負荷に配慮した施設の維持管理方針の策定や、補修・補強対策の工法選定が容易に行えるようになる。
  • 本LCCO2算定手法を用いて、コンクリート水路の維持管理方針(シナリオ)が異なる場合(表1)における補修・補強工事の累計補修費及び累計CO2排出量の比較を行った結果を図1に示す。本研究モデルの検証では、シナリオとして維持管理レベルを高くした場合(シナリオ1)には、累計補修費は安価となるが累計CO2排出量は高い値を示す。一方、維持管理レベルが低い場合(シナリオ4)には、累計補修費はかなり高価となり累計CO2排出量は二番目に高い値を示す結果となる。
  • コンクリート開水路の補修・補強工事には様々な工法があるが、ここでは図2に示すパネル工法と断面修復工法を例として取り上げ、工法の相違による累計補修費の比較及び累計CO2排出量の比較を図3に示す。累計補修費ではパネル工法と断面修復工法には大きな差はでないが、累計CO2排出量での評価ではパネル工法の方がCO2を大量に排出することを示している。環境負荷の観点から施設の補修・補強工事を評価する際には、有機系資材によるCO2排出量の占める割合が高いことに注意を払う必要がある。

成果の活用面・留意点

  • LCCO2算定手法は、コンクリート開水路の補修・補強工事で排出されるCO2量を把握するためのツールとして活用することができる。この簡易な算定手法を用いることにより、国や団体は環境負荷に配慮した補修・補強対策工法を見出すことが容易になる。
  • LCC算定においては、施設の健全度が二次曲線で低下する単一劣化予測モデルを用いている。多様な補修・補強対策工法に対応した劣化予測モデルがないことから、複数の劣化要因に対応するシステムの構築が必要である。

具体的データ

表1 維持管理シナリオの区分
図1 シナリオ別算定結果(水路延長4,435mで試算)
図2 補修・補強工事の施工状況
図3 工法の相違による比較(水路延長90mで試算)

(國枝 正)

その他

  • 中課題名:農業水利施設の効率的な構造機能診断および性能照査手法の開発
  • 中課題番号:411a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2009~2011年度
  • 研究担当者:國枝正、本間新哉、加藤敬、森丈久、西原正彦
  • 発表論文等:1)本間(2010)農業農村工学会大会講演会講演要旨集:642-643
                       2)本間ら(2010)農工研技報、211:45-57
                       3)國枝ら(2011)第62回農業農村工学会関東支部講演要旨集:88-91