地域の福祉施設と連携した耕作放棄地の再生

要約

耕作放棄地を知的障がい者の農作業訓練の場として活用することにより、実証事例では最大2,400平方メートルの耕作放棄地が再生されるとともに、障がい者の社会適応力向上など福祉側の利点もある。

  • キーワード:耕作放棄地、農作業訓練、障がい者福祉、地域資源活用
  • 担当:基盤的地域資源管理・農用地保全管理
  • 代表連絡先:電話 029-838-7509
  • 研究所名:農村工学研究所・農村基盤研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

農村地域の過疎化、少子高齢化に伴い、地域資源管理の担い手が不足し、耕作放棄地が増加している。そのため農業者にとどまらず多様な担い手の関わりが必要である。一方、障害者自立支援法の施行を契機に障がい者の自立と地域への移行の支援が推進され、遊休化の進む農地を活用して、障がい者らが農作業に取り組む事例も散見される。
そこで、農業と福祉の連携(農福連携)による実証事例から、障がい者の農作業訓練の場として耕作放棄地を活用することによる再生の可能性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 岡山県T市では、農林関係部局や農家有志らから構成される農業生産振興組織を中心に、耕作放棄地を活用した雑穀栽培に取り組む。その一環として、障害福祉サービス提供事業所(いわゆる福祉施設)のN園(主に知的障がい者対象、以下N園と表記)では、耕作放棄地を地権者から借り受けて、利用者による農作業を実施している。
  • N園は、2009年度は近隣の遊休化していた3カ所、計2,330平方メートルの農地で、主に雑穀や露地野菜等を栽培している(表1)。利用者ら4名は担当の支援員とともに、週に3日程度の頻度で、近隣の農家の技術的支援を受けつつ、草刈、耕耘をはじめ、苗の移植、収穫、選別や包装等、特性に応じて多様な作業を担う。
  • 表1の3地区のうちA地区については、障がい者らの熱心な取り組みをみた近隣農家から、翌2010年度に新たな協力申出があり、前年度と比較して農地の提供者は1名から4名に、農地は1筆から6筆に増加し、A地区で再生された耕作放棄地面積は930平方メートルから2,405平方メートル(2.6倍)に拡大している(図1)。
  • この取り組みによる耕作放棄地の再生面積は、再生後の利用目的別に既存データと比較すると「体験・市民農園」や「特産品栽培」とほぼ同等の面積である(表2)。N園は特産品の栽培等を通じて耕作放棄地の再生に寄与しており、地域の社会福祉法人等を重要な地域資源管理の担い手の一員として位置づけ、農福連携を推進する意義が確認できる。
  • 一方、障がい者の施設職員ら専門家は、作業に関わる障がい者が農作業を通して、持久力の向上、好ましい生活習慣の習得のほか、支援農家や近隣住民との交流を通じて社会適応力などを身につけたとプラスの評価をしている。また、社会福祉法人などによる農作業場所の確保が困難な現状に対して、遊休化した農地は農業者との競合関係を回避し易く借りやすいなど、福祉側からの意義も認められる。

成果の活用面・留意点

  • 遊休化した農地は、条件によっては、農業技術や基盤整備など農業分野の行政や農家等の支援が不可欠であり、生産基盤の整備状況や地域の支援環境に留意する必要がある。
  • 農作業訓練は、将来的には障がい者の自立と就労を視野に入れて実施されている。障がいの種類を限定するものではないが、本事例では知的障がい者の訓練を対象としている。

具体的データ

表1 耕作放棄地を活用した農作業訓練の実施圃場(2009年時点)
図1 地区Aの平面模式図(耕作放棄地の再生面積の拡大状況)
表2 再生後の利用目的別にみた耕作放棄地の再生面積の比較

(片山千栄、石田憲治)

その他

  • 中課題名:農用地の生産機能の強化技術および保全管理技術の開発
  • 中課題番号:420b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011年度
  • 研究担当者:坂根 勇、石田憲治、片山千栄
  • 発表論文等:1)石田ら(2011)第66回農業農村工学会中国四国支部講演会講演要旨集:101-103
                       2)片山、石田(2011)日本農村医学会誌、60(3):398
                       3)石田ら(2011)システム農学、27(別号1):45-46