ALOS衛星AVNIR-2データと水田区画データを用いた水稲作付け判別手法

要約

教師なし分類法で衛星画像の各画素を40クラスに分類後、水稲作に対応するクラスを選択・統合して水稲作か否かの2クラスの画像を作成し、それに水田区画データを重ねて、水稲作の画素が過半数を占める区画を水稲作の区画として判別する手法である。

  • キーワード:ALOS衛星、水田区画、水稲作付け、リモートセンシング
  • 担当:基盤的地域資源管理・自然エネルギー活用
  • 代表連絡先:電話 029-838-7535
  • 研究所名:農村工学研究所・農村基盤研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

衛星データを用いて広域の水稲作付け図を低コストで作成しようとすると、安価な中解像度(10m程度)の光学データを用いる必要がある。中解像度の光学データを用いた作付け判別に関するこれまでの研究では、画像分類に主に教師付き分類法が適用されているが、牧草作の転換畑や不作付田の多い地域ではその適用は難しい(それらの圃場では刈り取りや草刈りが適宜行われいて、植被状態が圃場間で大きく異なり、教師データの設定が難しいため)。そこで、そのような地域でも適用できる、教師なし分類法をベースにした水稲作付けの判別手法を提案し、10m解像度のALOS衛星AVNIR-2データを用いて判別の精度検証を行う。

成果の内容・特徴

  • 水稲作付けの判別は次のようにして行う(図1)。まず、青、緑、赤、近赤外の各波長帯のデジタル値とNDVI(植生指数)に基づき、教師なし分類法(ISODATA法)により衛星画像の各画素を統計的に40クラスに分類する。次に、各クラスを水稲作と非水稲作のいずれかに対応づけて2クラスに統合する。最後に、2クラスからなる分類画像に水田区画データを重ねて、水稲作の画素が過半数を占める区画を水稲作田と判定する。
  • 牧草作の転換畑や不作付田の多い平地エリア(福島県大玉村東部)を対象に、6月15日(水稲の分げつ前期)、7月2日(分げつ後期)、9月17日(成熟期)、10月16日(収穫期)に観測された衛星データを用いて行った判別の判別精度(1,000m2以上の区画に限定)は、それぞれ99.0%、97.9%、95.4%、95.5%である(表1)。
  • 6月15日の衛星データを用いた判別では、湛水状態あるいは湿潤状態の調整水田(非水稲作田)が誤判別されている。7月2日には植被率のまだ小さい水稲作田が一部あり、同日の衛星データを用いた判別でも、その水稲作田と湛水状態あるいは湿潤状態の調整水田との区別が難しいことが誤判別の主な要因になっている。
  • 9月17日には穂の黄化が遅れた水稲作田が一部あり、同日の衛星データを用いた判別では、その水稲作田と植被のある牧草作の転作田や不作付田との区別が難しいことが誤判別の主な要因になっている。
  • 10月16日には収穫後で植被がない水稲作田と収穫前で植被がある水稲作田が混在しており、同日の衛星データを用いた判別では、稲わらが田面にあまり残されていなかった水稲作田と、植被がほとんどない、刈り取り後の牧草作の転作田や裸地状態の転作田等との区別が難しいことが誤判別の主な要因になっている。

成果の活用面・留意点

  • 食糧管理、用水管理等の実務や、流出解析、生態系調査等の調査・研究において、水稲の作付け状況を広域的に把握する際に活用できる。
  • 水稲作と非水稲作の2クラスに統合する作業において、確実に水稲作田あるいは非水稲作田である区画の情報が対応づけの参照データとして必要であり、その情報を現地踏査や水田台帳等により収集する必要がある。
  • ALOS衛星AVNIR-2データのような中解像度の光学データならば、どのような衛星データでも利用できる。なお、ALOS衛星は現在運用が終了になっている。

具体的データ

図1 水稲作付けの判別の流れ
表1 水稲作付けの判別結果と判別精度(1,000m2以上の区画に限定)

(福本昌人)

その他

  • 中課題名:自然エネルギー及び地域資源の利活用技術と保全管理手法の開発
  • 中課題番号:420c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011年度
  • 研究担当者:福本昌人、吉迫宏
  • 発表論文等:1)福本、吉迫(2011)農業農村工学会論文集、272:91-98