リアルタイムで防災情報を提供する「ため池防災情報配信システム」

要約

自治体や地域住民にリアルタイムに予測したため池の被災危険度や簡易氾濫解析結果等の防災情報を携帯メールやホームページを通して伝達することができ、防災対策の優先順位決定や適切な避難判断・行動を支援し、地域の防災・減災力の向上を図ることができる。

  • キーワード:防災情報配信、ため池、リアルタイム、減災
  • 担当:
  • 代表連絡先:電話 029-838-7671
  • 研究所名:農村工学研究所・農村総合研究部・広域防災研究チーム
  • 分類:普及成果情報(2009年度)

背景・ねらい

大規模地震や局所的な豪雨による大きな自然災害が多発している。災害時にため池が決壊等を起こした場合は被害が甚大となり、農業生産基盤のみならず人命にも大きな被害を与える可能性がある。このような被害を最小化するには、施設整備等のハード対策だけでなく、ため池にかかるハザードマップ整備や予測される災害情報の提供等のソフト対策も重要である。そこで、ため池の被災危険度や簡易氾濫解析結果等の防災情報を、リアルタイムに予測し、直ちに自治体・地域住民へ伝達する仕組みを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、自治体のパソコン(PC、Windows2000以上)において動作し、気象情報と地震情報を自動でデータ受信し、雨量条件等によってため池の被災危険度を予測し、PC上の地図でため池の位置とともに被災危険度をメッシュで色分け表示する(図1)。
  • 上記PCより、ため池毎に登録されたメールアドレスへ、気象情報やため池の被災危険度の防災情報等を自動的にメール送信する(図1)。情報の形式は携帯電話による閲覧を前提としてテキスト形式としている。受信者は、参照アドレスをクリックすることで、管理ため池毎の被災危険度の推移(図2下)および事前に解析を行ったため池の簡易氾濫解析画像(図2右)を閲覧することができる。
  • 降雨によるため池の被災危険度は、気象庁の短時間予報を用いた6時間後までの予測結果が配信されるため、ため池管理者や地区長等はため池の状況確認や避難時期の判断など減災につながる適切な対策を早期に行うことができる。
  • 予測された被災危険度情報は一覧表示でサーバ上に格納され、ウェブ上で表示できる(図2上)。また、予測される氾濫域を随時表示することができるため、ホームページでの公開等により、関係者間で情報を共有することが可能である。
  • 地震の場合は、各ため池における震度情報をメールで速報する。これにより、ため池管理者等は緊急点検の優先順位を判断できる(図3)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:地方自治体・土地改良区などため池の管理者。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:平成24年3月現在、農政局等で7つの部署、地方自治体等で27箇所に普及済みである。

具体的データ

図1 ため池防災情報配信システム

(井上敬資)

その他

  • 中課題名:地域防災力強化のための農業用施設等の災害予防と減災技術の開発
  • 中課題番号:412c
  • 予算区分:実用技術(ため池防災)
  • 研究期間:2005~2009年度
  • 研究担当者:井上敬資、谷茂、片田敏孝(群馬大)、金井昌信(群馬大)
  • 発表論文等:1)井上ら(2009)農業農村工学会誌、77(11):7-10