AR機能を搭載した災害情報管理のための通信情報共有システム

要約

地図上のメモや写真をサーバに送信する機能、現実の風景とレイヤを重ね合わせ参照する機能(AR機能)を搭載したipad版モバイルGISによって、災害現場での被災状況調査データの送信や破損施設の設計図面や保守データの参照・更新等が容易にできる。

  • キーワード:災害調査、資源管理、GIS、モバイル、AR
  • 担当:農村防災・減災・農地・地盤災害防止
  • 代表連絡先:電話 029-838-7600
  • 研究所名:農村工学研究所・技術移転センター
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

農業農村整備事業に携わる技術者のGIS利用は進みつつある。そのため、災害現場での水利施設の破損状況、法面崩壊や農地損壊、施設管理等にかかる情報の早期収集と情報共有等、野外で利用できるモバイル機能を搭載したGISの開発が求められている。しかし未だ、末端現場で安くて簡単に使える情報共有型GISは少ない。また、農業農村整備事業における新たな技術開発5カ年計画においても、広域防災機能の増進、また災害予測及び情報提供に資する技術として、かつ効率的・効果的な調査・計画・管理に資するイノベーションとして、災害情報管理のための通信情報共有システムの開発があげられている。
本システムはAR機能と通信システムを用いた調査・管理の効率化を図るための技術であり、VIMS(農工研開発のGIS)と連動していることから、国営・県営の土地改良事業に携わる技術者から農家や地域住民までが、業務に合わせて利用することが可能である。また、水利施設の老朽箇所・程度、保守履歴などストックマネジメントに関する情報の更新、耕作放棄地の調査、農地・水保全管理支払交付金の現地確認調査等にも応用できる。 (AR機能とはAugmented Reality拡張現実感の略で現実とコンピュータの融合機能)

成果の内容・特徴

  • 本システムは、農村工学研究所が開発した3次元対応クライアント&サーバ型農地基盤情報管理システムVIMSと連動したシステムであり、VIMSから調査・管理業務に必要かつ適切な分量のデータをApple社のiPadに切り出し、野外で利用できる(図1)。
  • プログラム言語はObjective-Cを使い、MacOS X上で開発する。また、iPadに加えてiPhoneでも動作するようにした。本システムを「iVIMS」と呼ぶ。
  • 現地調査で集積したデータを持ち帰り、各クライアントiPadからVIMSサーバにデータをアップすることによって、データを共有するのが一般的である。但し、携帯電話の通信可能領域では、写真データや地図メモを、特定レイヤの描画データとしてメールで送信することができ、現場とVIMSサーバ間でGISの情報共有がリアルタイムで可能となる。
  • 災害状況・作付け・耕作放棄の調査等は、現地の施設位置をGPSとオルソから特定した後に、施設被害状況や農地筆等に付随する属性データを呼び出し、タブレットから直接更新することができる(図2)。チェックまたは確認後にデータを更新したい場合は、地図メモ機能を使って画面上へ文字や記号を書き入れ、帰ってから地図メモと本体VIMSデータとを照合しながら入力する。また、法面の崩壊等の被災状況地点の詳細写真データも写真上にメモを書き入れてメール送信またはデータ更新することが可能である(図3)。
  • 埋設施設の特定や特定位置に情報杭を立てるためには、図4にあるAR機能を稼働する。内蔵カメラを探索方向に向け、実際の映像とGISの視点位置からのレイヤ情報をオーバーレイして見ることができることから、困難な調査を支援することができる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:国営・県営事業所、土地改良区、農業生産法人、地域住民等、現地調査者
  • 普及予定地域:災害状況調査、施設管理に関する事業現場
  • その他:運用にはVIMSの導入が必要。土地改良技術事務所で検証試験後、商品化予定。

具体的データ

 図1~4

その他

  • 中課題名:高機能・低コスト調査技術を活用した農地・地盤災害の防止技術の開発
  • 中課題番号:412a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2012年度
  • 研究担当者:山本徳司、重岡 徹
  • 発表論文等:
    1)山本(2012)農村振興、750:26-27
    2)進藤ら(2012)平成23年度官民連携新技術研究開発事業研究開発成果報告書
    3)山本(2013)JACEM、56:5-11