ハクサンハタザオを用いたカドミウム含有畑地土壌の浄化技術

要約

ハクサンハタザオを用いた植物浄化により、Cdを含有する畑地土壌では4作で5~7割のCdが除去される。また、実験的に得られる土壌Cd含有量と植物体Cd濃度の関係式に基づく算定手法により、栽培回数による土壌Cd含有量変化の予測が可能となる。

  • キーワード:植物浄化、カドミウム、ハクサンハタザオ、畑地、浄化所用期間
  • 担当:基盤的地域資源管理・農用地保全管理
  • 代表連絡先:電話 029-838-7553
  • 研究所名:農村工学研究所・農地基盤工学研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

近年、国際的にカドミウム(Cd)による食品汚染が問題視されるようになり、2006年にはコーデックスにおいて農作物(穀類、野菜等)のCd濃度に関する国際基準値が採択され、日本でもコメのCd国内基準値の改正が行われた。今後の経過によっては、畑作物に対してもCd濃度基準値が設定される可能性があり、将来に備え、畑地基盤を対象としたCd浄化技術の開発が必要である。
ため池底泥土からの重金属除去のために見いだされたアブラナ科植物「ハクサンハタザオ」は、高いCd吸収能力を持つことが明らかにされている。そこで、ハクサンハタザオを利用した畑地基盤のCd除去技術を開発するために、畑地土壌を対象にCd除去効果の検証、Cd浄化期間算定手法の構築を行う。

成果の内容・特徴

  • ハクサンハタザオは冬型植物であるため、9月下旬~10月上旬に苗の移植を行い、4月下旬~5月中旬に収穫を行う(表1)。このため、夏作物の裏作を利用したCd除去が可能であり、夏作型の浄化植物との併用も可能と考えられる。
  • Cdが含有する黒ボク土(我が国の主要な畑地土壌)圃場における栽培試験の結果から、4作の栽培によって、初期Cd含有量に関わらず、約6割のCdが除去される(図1)。また、その他の地域で行われた黒ボク土圃場(1箇所)、低地土圃場(1箇所)における栽培試験の結果と総合すると、4作の栽培により5~7割のCdが除去される。
  • 植物を用いた土壌浄化の導入にあたっては、対象圃場において浄化期間がどのくらいに及ぶかを把握することが非常に重要である。そこで、対象圃場における浄化所用期間を概算するため、ポット試験等から実験的に得られた土壌Cd含有量と植物体Cd濃度の関係式に基づき、栽培回数による土壌Cd含有量の変化を予測する算定手法を構築する(図2)。構築した算定手法により、現地圃場における栽培回数による土壌Cd含有量の変化は概ね良好に予測される(図3)。このため、土壌Cd含有量の修復目標値を設定することにより、算定結果から浄化所用期間の推定が可能となる。

成果の活用面・留意点

  • 畑地土壌のカドミウム浄化を主対象とした手法であるが、排水改良等により乾田化された水田圃場には導入可能である。
  • 植物浄化の特徴として、浄化範囲は根が届く範囲である(ハクサンハタザオの場合、深さ15 cm程度)。
  • 収穫物は、現行法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に基づき処理する必要がある。このため、事業導入に当たっては、廃棄物収集・運搬業者、関係自治体等と収穫物の受け入れについて計画段階で協議する必要がある。

具体的データ

 表1、図1~3

その他

  • 中課題名:農用地の生産機能の強化技術及び保全管理技術の開発
  • 中課題番号:420b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2012年度
  • 研究担当者:亀山幸司、谷茂、塩野隆弘、宮本輝仁、北島信行(フジタ)、石川祐一(秋田県立大)
  • 発表論文等:
    1)亀山ら(2009)農業農村工学会論文集、259:99-106
    2)亀山ら(2011)農業農村工学会論文集、276:441-448
    3)亀山ら(2012)農業農村工学会論文集、282:543-548