農家が使える無資材・迅速な穿孔暗渠機「カットドレーン」

要約

農家所有のトラクタに装着できる穿孔暗渠機「カットドレーン」は、資材を使わず、40~70cmの任意深の溝下横側に、10~15cm角の連続した空洞を、心土破砕と同じ施工速度で成形する。本穿孔空洞は、排水路に通じる無材の暗渠や既設暗渠に続く補助暗渠になる。

  • キーワード:穿孔暗渠、無資材、カットドレーン、農家、トラクタ
  • 担当:新世代水田輪作・農地生産機能
  • 代表連絡先:電話 029-838-7555
  • 研究所名:農村工学研究所・農地基盤工学研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

排水不良地における畑作物の生産性向上には、ほ場の排水改良が不可欠である。そのため、生産現場からは、資材を用いる暗渠と同様の排水機能をもち、迅速に安く農家自身が行える排水改良技術が求められている。そこで、農家自身が資材を使わず迅速に施工できる暗渠と補助暗渠の両方で利用が可能な新たな穿孔暗渠機を実用化する。

成果の内容・特徴

  • 穿孔暗渠機「カットドレーン」は、農家のトラクタに装着し、トラクタの牽引力で土中の40~70cmの任意の深さに資材を使わずに連続した通水空洞を成形する。施工方法は、図1に示すように、1.土を四角形のブロックに切断、2.土の四角ブロックを持ち上げ、下に四角形の隙間を作る、3.その隙間の横の土を別の四角形ブロックを切り出し隙間の中に寄せることで溝下横側に、空洞上面に攪乱のない崩落しにくい四角形の通水空洞を成形する(図1)。
  • カットドレーンは、施工深を70cmまで深くできることから、畦を超えて施工機を排水路内に下ろして法面に空洞を貫き、簡易な暗渠として利用できる。また、施工機を圃場面から挿入し既設暗渠に対する補助暗渠としても利用できる(図2)。
  • カットドレーンは60PS超のフルクローラートラクタや70PS超のホイールトラクタに対応する。施工速度は2~4km/hが望ましく、心土破砕と同速度で、既存のトレンチャ穿孔暗渠機やモミガラ心土破砕機より早い。
  • カットドレーンは、施工圃場からの排水が暗渠機能を目安であるピーク排水量5mm/h以上を確保でき、降雨後の高い地下水位を迅速に低下させ、簡易な暗渠として十分な排水機能がある(図3)。そのため、湿害に弱い畑作物に対して普通の暗渠と同等の収量維持効果が見込める(表1)。施工2年後も粘性土や高有機質土で通水空洞が維持している(図2上)。
  • カットドレーンは、重粘土や泥炭土などでの適用性が高い。使用上の留意点は、1.砂50%以上又は土性(農学会法)S・SLでは使用できず、Lの土壌では耐用期間が短い。2.砂礫層或いは5cmを超える石礫に富む場合、直径5cmを超える埋木がある場合は施工できない。3.穿孔の間隔は2~5mを標準とする。4.主に転換畑、畑、草地で使用する。水田では既設暗渠の補助暗渠として使用する。

普及のための参考情報

  • 普及対象:排水不良地域の農家や法人、農業団体、農機メーカー、建設業者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国の排水不良地域の畑作物の生産地に数十台の導入が想定される。2014年2月時点で4道県6農家において実証済み。
  • その他:株式会社北海コーキが市販及び農機メーカーが代理店販売。

具体的データ

図1~3,表1

その他

  • 中課題名:低コスト整備と水位制御による農地の生産機能強化技術の開発
  • 中課題整理番号:111a3
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2010~2013年度
  • 研究担当者:北川巌・後藤幸輝(株式会社北海コーキ)
  • 発表論文等:
    1)北川ら「穿孔成形作業機および穿孔成形方法」特願2013-135684
    2)北川ら(2010)農業農村工学会誌、78(11):899-902
    3)農研機構(2013)プレスリリース、2013.11.6