地域防災のためのスマートフォンを活用した雨量観測・閲覧システム
要約
局所的に発生する雨量データを収集・記録・配信する雨量観測ツールと、配信された雨量データをスマートフォンでリアルタイムに示す閲覧ソフトを備えたツールからなる簡便なシステムを開発し、豪雨災害に対する住民の自主防災活動の判断を支援する。
- キーワード:地域防災、雨量観測、スマートフォン、豪雨災害
- 担当:農村防災・減災・農地・地盤災害防止
- 代表連絡先:電話 029-838-7534
- 研究所名:農村工学研究所・農村基盤研究領域
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
災害に強い安全な農村地域をつくるためには、土木工事等によるハード的な防災対策の推進のみならず、ソフト的な防災対策として地域住民の防災意識の向上に努めることが重要である。また、中山間地域では密に雨量観測が行われていないため、自治体による局所的に発生する豪雨の把握が難しく、きめ細かな避難勧告の発令とこれに基づく避難行動を困難にしている。そこで、地域住民や農業関係組織の要望を受けて、住民自らが居住地域の雨量を観測し、河川の氾濫や斜面崩壊・土石流、ため池の決壊などの農村の豪雨災害に対して早期に自主的な避難行動をとることができるように、スマートフォンを活用することにより、従来品に比べて安価な雨量の観測・閲覧システムを開発する。
成果の内容・特徴
- 雨量の観測は、転倒枡型の雨量計、I/Oボード、スマートフォン、太陽電池パネルおよびバッテリーで構成される観測ツール(図1)を用いて行う。雨量計とスマートフォンはI/Oボードを介して接続され、雨量計からのパルス信号がI/OボードでON/OFF信号に変換されてスマートフォンに入力される。スマートフォンは、パルスのカウント情報を雨量データに加工するととともに、3G回線を通じて地域住民等に雨量データを配信する(図2)。バッテリーからの給電状況や観測ツール内の温度等を監視する機能も有している。
- 地域住民は、手持ちのスマートフォンやタブレット端末に閲覧ソフトをインストールすることにより、配信された雨量データを閲覧することができる。高齢者でも使いやすいように、簡単な画面タップ操作で数値表示とグラフ表示の切り替え(図3)や時間雨量表示と累積雨量表示の切り替えができるように設計されており、また画面表示もビジュアルである。雨量がある警戒値を超えると画面上の表示色が赤系に変わる機能も有している。
- 観測と閲覧の2つツールからなる本システムは、住民自らが居住地域の雨量を観測し、雨量情報を共有することを可能にするものであり、自主防災活動の取り組みを支援する有用なシステムである。
- 山梨県甲府市帯那地区における実証試験では、上流側と下流側に観測ツールを設置して、
自治会長、土地改良区長等が雨量状況を観察しながら、適時、住民への水路やため池の増水に対する注意喚起の連絡を行うなど、機器のトラブルもなく自主防災活動の一環として運用できている。
普及のための参考情報
- 普及対象:地区、土地改良区、市町村の防災担当者
- 普及予定地域:中山間地域の集落で100セット。山梨県甲府市は2セット設置している。
- その他:観測ツール(雨量計、I/Oボード、スマートフォン、太陽光パネル、バッテリー)の資材費は、1セット20万円程度。閲覧ソフトは無料配布予定。
具体的データ
その他
- 中課題名:高機能・低コスト調査技術を活用した農地・地盤災害の防止技術の開発
- 中課題整理番号:412a0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2011~2013年度
- 研究担当者:重岡徹、福本昌人
- 発表論文等:
重岡(2014)職務作成プログラム「雨量観測データをわかりやすくディスプレイに表現するためのデータ変換プログラム」、機構-Q14