生産者・消費者の連携によるCSA導入の促進

要約

日本におけるCSAの立ち上げには、生産者間での共同出荷と消費者交流による生産者・消費者の連携が有効である。同時にCSAに関する情報提供、仲介、認定を担う支援組織を機能させることで、国内でのCSA導入が促進される。

  • キーワード:CSA(Community Supported Agriculture)、消費者交流、有機農産物、支援組織
  • 担当:基盤的地域資源・農用地保全管理
  • 代表連絡先:電話 029-838-7549
  • 研究所名:農村工学研究所・農村基盤研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

CSA(Community Supported Agriculture)は、消費者と生産者が連携し、主に有機農産物の前払いによる定期契約を通じて相互に支え合う仕組みとして、欧米を中心に世界的な広がりをみせている。CSAは都市住民を含む多様な人材が農場運営に関与することで、地域内の農地保全やコミュニティ再生に寄与する。しかし、日本国内のCSAは、現状ではわずか数事例にとどまる。そこで、日本でCSAを普及させるために、茨城県つくば市でのCSAの試みや国内外の先行事例の分析をもとに、日本でCSA導入を促進するうえでの課題と必要な条件を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 茨城県つくば市で有機青空市に参加している生産者グループのCSA導入の取り組みから、CSA導入の課題を把握したところ、同有機青空市は新規就農者が多いことから、CSAを導入する場合、1)生産者単独では多品目の有機野菜セットの出荷が難しい、2)地域内の消費者との交流がない、3)市街地に近接した出荷場の確保が難しい、といった要因が抽出された。
  • CSA導入過程の分析対象とした産消提携グループのTネットワークは、同有機青空市に参加する1名の生産者が中心となり、有機青空市の生産者と消費者グループで組織されている。Tネットワークは、複数の新規就農者が共同出荷することで、CSAに求められる多品目野菜の供給を実現している。また、既存の消費者グループと連携することで、地域内の生産者・消費者間の交流を促進しつつ、上記の課題を克服している。
  • 欧米で広く普及しているCSAは、1つの農業経営体と複数の消費者が契約を結ぶことが一般的であるが、生産者が共同出荷することで、経営規模が小さく多品目生産の体制が整わない新規就農者が、直売や相対取引を継続しながらCSAに参加できる。また、農業体験や援農を通じた消費者交流を生産者が共同で行うことで、CSAに不可欠な生産者と消費者による地域組織の形成が可能となり、地域内の交流の促進にもつながる。このような生産者・消費者の連携によるCSA 立ち上げのプロセス(図1)は、日本でCSAの導入を促進するのに有効である。
  • 欧米でCSAが普及する要因のひとつに、CSAを支援する組織の存在が挙げられる(表1)。これらの組織が果たす機能は、CSAに関心をもつ生産者と消費者に向けての情報提供機能、生産者と消費者間の仲介機能、CSAの認定機能の3つである。国内でCSAの普及を図るためには、これらの機能を担う支援組織の創設が求められる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 国内では広域での集荷配送を行う有機農産物宅配業が確立されていることから、CSAの導入に際しては、地域性を重視し、地域内の消費者に対する地域資源保全や農業者育成への啓発を念頭においた住民組織の形成が求められる。
  • 現在、国内におけるCSAの普及を目指し、研究者と国内のCSA実践者を中心に、任意団体による支援組織の開設を検討している。

具体的データ

図1~2,表1

その他

  • 中課題名:農用地の生産機能の強化技術および保全管理技術の開発
  • 中課題整理番号:420b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2013年度
  • 研究担当者:唐崎卓也、坂根勇、福与徳文、石田憲治
  • 発表論文等:
    1)唐崎ら(2012)農村生活研究、56(1)、25-37
    2)唐崎(2013)農業および園芸、88(4)、473-480
    3)唐崎(2013)第14 回日本有機農業学会大会資料集、48-50