畑地灌漑用水量計画へのキャパシタンス土壌水分センサーの適用

要約

キャパシタンス土壌水分センサーは、現行の畑地灌漑用水量計画で標準的に使用されるテンシオメータ法と比較して、土壌が湿潤な時には同等、土壌が乾燥した時でも測定が可能であり、計画基礎緒元取得のための簡易な測定法として適用できる。

  • キーワード:土壌水分、畑地灌漑、現地測定、灌漑計画、電磁波
  • 担当:基盤的地域資源管理・農用地保全管理
  • 代表連絡先:電話 029-838-7552
  • 研究所名:農村工学研究所・農地基盤工学研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

1997年制定の現行の土地改良計画設計基準「農業用水(畑)」(以下、設計基準)の改定に向けて、更新整備・環境配慮に係る記述の追加や、用水計画に係る最新知見(土壌水分測定や栽培管理用水に係る事項等)の反映が検討されている。新しい土壌水分測定である誘電式水分計は、設計基準で標準的な方法として位置付けられているテンシオメータ法に比べ、直接土壌水分量が測定できることや、水分補給等の手間を必要とせず、野外条件下での連続的な土壌水分測定に適している等の利点を有する。特に、誘電式水分計のうちキャパシタンスセンサーは安価で取り扱いが容易であり、栽培試験や行政の調査業務等でも活用され始めようとしているが、実証試験例が少なく適用性が十分評価されていない。そこで、キャパシタンスセンサーとテンシオメータを用いた現地における比較試験を行い、それぞれの測定値を基に畑地灌漑計画基礎緒元である日消費水量や総容易有効水分量(TRAM)等を算定し、それらを比較することにより代替法としての適用性を検討する。

成果の内容・特徴

  • 畝部分にマルチをしたナス栽培ほ場で、キャパシタンスセンサー(Decagon 社製、EC-5)とテンシオメータを用いた現地における比較試験を行う。キャパシタンスセンサーはセンサー部長さ6cm のもの使用し、テンシオメータ設置深さと同じ、6深度(5、15、25、35、50、70 cm)で観測を行う(図1)。
  • キャパシタンスセンサーは湿潤時においてはテンシオメータと同等の計測が行える。また、テンシオメータでは測定できないpF3.0以上の乾燥時においてもキャパシタンスセンサーは連続的な測定が可能で、作物の吸水による土壌水分消費をとらえることができる(図2)。
  • 0~80cmまでの土層を対象に土壌水分減少法により日消費水量を算定した結果、キャパシタンスセンサーは飽和状態から絶乾状態まで測定可能であるため、湿潤時ではテンシオメータと同様な日消費水量が算定可能である。また、テンシオメータでは測定が難しい乾燥時における消費水量の算定にも有用である(図3)。
  • 湿潤時におけるキャパシタンスセンサーとテンシオメータそれぞれの実測値を基に算定したTRAMは概ね同様のものが得られる。また、乾燥時にテンシオメータの測定限界を超えるとTRAMの算定ができないが、キャパシタンスセンサーでは乾燥時においてもTRAMの算定が可能である(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 土地改良事業計画設計基準「農業用水(畑)」技術書を通じて用水量計画を行う実務担当者に活用される。また、畑地灌漑を行っている篤農家や栽培時の土壌水分管理の評価を行う研究員や普及員に有用な情報となる。
  • 本成果の留意点:キャパシタンスセンサーは対象土壌を用いて、現地の乾燥密度に合わせた条件でのキャリブレーションが必要。礫混じりの土壌では設置に注意が必要。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:農用地の生産機能の強化技術および保全管理技術の開発
  • 中課題整理番号:420b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2013年度
  • 研究担当者:宮本輝仁、塩野隆弘、亀山幸司、岩田幸良
  • 発表論文等:宮本ら(2013)農業農村工学会論文集、288:99-106