無機系表面被覆によるコンクリート開水路水路(RC開水路)の耐力回復効果

要約

梁の圧縮縁を無機系被覆補修した単鉄筋RC梁の曲げ載荷試験をした結果、被覆供試体の耐力は健全供試体とほぼ同レベルに回復したことから、無機系被覆補修にはコンクリート開水路の耐力を回復する効果がある。

  • キーワード:RC開水路、摩耗、断面欠損、無機系表面被覆工、耐力
  • 担当:水利施設再生・保全・施設機能・性能照査
  • 代表連絡先:電話 029-838-7572
  • 研究所名:農村工学研究所・施設工学研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

RC開水路の多くは高度成長期に建設されており、通水面には摩耗等による断面欠損が発生している。現場打ち開水路の壁厚は15~20cm程度と薄く、摩耗による断面欠損は部材の有効高さの10%以上に達する場合もあり、開水路部材の曲げ耐力を低下させる可能性がある。壁厚が10cm以下と薄いコンクリート2次製品水路ではこの影響はより顕著となる。将来的にはこのような壁厚の薄い開水路で摩耗劣化が進行した場合の水路の耐力回復のための対策工法の開発が必要不可欠である。本研究では、被覆工を模擬したRC梁供試体の曲げ載荷試験を行い、表面被覆補修対策による耐力回復効果について検証する。

成果の内容・特徴

  • 土圧が作用する単鉄筋RC開水路側壁を対象に側壁の破壊断面となる側壁付け根の応力状態をRC梁(長さ1,500mm、高さ150mm、幅100mm)の4点曲げ試験により再現(図1)し、図2に示す健全供試体、欠損供試体、補修供試体(4体)の計6体のRC梁による曲げ載荷試験を行った結果、被覆供試体の降伏荷重および終局荷重は欠損供試体に較べ増大し、供試体の荷重は健全供試体とほぼ同じレベルまで回復する。また、被覆供試体の破壊時の変形は健全及び欠損供試体に較べて約1.5倍程度大きくなる。以上の結果から、水路側壁を無機系表面被覆補修すれば、被覆材が下地コンクリートと十分付着する条件下では、側壁の曲げ耐力および変形性能は健全部材とほぼ同等レベルまで回復すると推測できる。
  • 被覆工に発生する浮きと梁の耐力の関係を明らかにするため、健全供試体、被覆供試体、浮きを模擬した計3体のRC梁供試体を作成し、比較試験を行った結果(図3)、降伏荷重は3供試体ともほぼ等しいが、破壊荷重・変位は模擬浮き供試体が健全供試体に較べて小さく、模擬供試体は中央変位約20mmの時点で図3に示すように模擬浮きの端部からひび割れが発生し被覆部分が剥離破壊を起こす。浮きがない供試体に較べて浮きを模擬した供試体は変形が小さい時点で被覆工の剥離破壊が生じており、このような破壊形態の違いが模擬浮き供試体の破壊荷重・変形を低下させた原因と推測できる。現場被覆水路においても大きな曲げモーメントが発生する側壁付け根付近に発生する浮きについては注意が必要である。

成果の活用面・留意点

  • 無機系被覆工の補修・補強設計に活用できる。
  • 実被覆水路の側壁は片持ち梁であり本実験とは応力状態が異なる点、地震時は交番荷重が作用し単調載荷の本実験とは荷重条件が異なる点に留意が必要である。

具体的データ

図1~3

その他

  • 中課題名:農業水利施設の効率的な構造機能診断及び性能照査手法の開発
  • 中課題整理番号:411a0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(低コスト)
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:中嶋勇、渡嘉敷勝、森充広、西原正彦、川上昭彦、川邉翔平
  • 発表論文等:浅野ら(2014)アップグレードシンポジウム論文報告集、14:661-668