Google Earthを用いた荒廃農地の効果的な可視化

要約

荒廃農地調査データと地番図の筆データを用いてGISで荒廃農地のKMZファイルを作成し、Google Earthを用いて航空写真画像上に荒廃農地を表示できる。本手法は、容易に荒廃農地の分布や荒廃状況の把握等を行うことができ、荒廃農地の再生利用の推進に役立つ。

  • キーワード:荒廃農地調査、GIS、Google Earth 、可視化、情報共有
  • 担当:基盤的地域資源管理・自然エネルギー活用
  • 代表連絡先:電話 029-838-7535
  • 研究所名:農村工学研究所・農村基盤研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

荒廃農地の再生利用の推進に資するため、市町村内のすべての農地を対象に、荒廃した耕作放棄地の荒廃状況等を一筆毎に把握する「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査(農林水産省農村振興局長通知)」が市町村と農業委員会によって毎年実施されている。また、2015年12月の「農用地等の確保等に関する基本指針(農林水産大臣)」に関する施策を推進する手法が求められている。そこで、茨城県下の農業委員会の協力を得て、荒廃農地調査で把握された荒廃農地をGoogle Earthを用いて可視化する手法を開発し、マニュアル化する。

成果の内容・特徴

  • 図1のような流れで荒廃農地のKMZファイル(Google Earth対応ファイル)を作成する。まず、荒廃農地調査の個票を整理し、荒廃農地の所在地(大字+地番)や荒廃区分(A分類、B分類)等が記載された個票データ(Microsoft® Excel® ファイル)を作る。次に、GISを用い、所在地情報に基づいて水土里情報利活用促進事業で整備された地番図の筆データの属性テーブルにその個票データを結合させ、荒廃農地の筆を抽出して荒廃農地のGISデータ(Shapeファイル)を作る。最後に、そのGISデータのレイヤを、色づけや情報表示に関するプロパティ設定を行ってからKMZファイルに変換する。
  • 荒廃農地のKMZファイルをGoogle Earthで開けば、図2のように航空写真画像(または衛星画像)上に荒廃農地の筆ポリゴンが表示される。Google Earthは、無料かつ操作が容易であり、荒廃農地の再生利用に関する話し合いや計画立案等において活用できる。
  • 近年、都市域だけでなく農業地域においても撮影時期の新しい航空写真画像がGoogle Earthに掲載されつつあり、同画像を用いて荒廃農地調査データの正誤チェックを行うことができる。また、ストリートビュー機能で現地写真を表示させることができるので、現地写真を用いて荒廃状況の確認を行うこともできる。
  • ArcGIS(ESRI社)を用いたKMZファイルの作成手順とGoogle Earthの活用方法を記載したマニュアルを作成し、農研機構のWEBサイトからダウンロードできるようにしている
    (http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pub2016_or_later/pamphlet/tech-pamph/073940.html)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:国・県・市町村の荒廃農地対策担当者(組織内部にGIS技術者がいなければ、担当者は本マニュアルを添付して土地改良事業団体連合会等にKMZファイル作成を依頼)
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:特に国営事業で造成された農用地に荒廃農地が見られる地域を想定
  • 荒廃農地のKMZファイルの作成を土地改良事業団体連合会等に依頼すると、1市町村あたり20~30万円ほど経費を要すると推察される。
  • 全国農地ナビと呼ばれる農地台帳の情報公開システムが運用されているが、同システムの航空写真画像は撮影時期が古いことや、同システムで把握できる農地台帳記載の遊休農地にはB分類の荒廃農地(再生利用は困難な荒廃農地)は含まれていないことから、同システムは荒廃農地調査に活用することはできない。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:自然エネルギー及び地域資源の利活用技術と保全管理手法の開発
  • 中課題整理番号:420c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2014~2015年度
  • 研究担当者:福本昌人、進藤惣治
  • 発表論文等:
    1)福本、進藤(2015)農村振興、788 : 32-33
    2)福本、進藤(2016)ARIC情報、121 :30-37
    3)福本、進藤(2016)農村工学研究所技報、218 : 19-26