カキ殻の暗渠疎水材としての透水性能

要約

  • 担当:東北農試・農村計画部・基盤整備研
  • 部会名:総合農業
  • 分科会名:作業技術
  • 分類:(2)

成果の内容

  • 技術・情報の内容及び特徴
    水田汎用化等の実施に伴い暗渠疎水材としてのモミガラの腐敗が著しく、排水性の低下対策として暗渠の更新技術や腐敗の少ない疎水材の開発が急がれている。また東北地方の水産地帯では、カキ殻が産業廃棄物として扱われ、その処理が大きな問題となっており、カキ殻の有効利用が望まれている。
    本研究はカキ殻を腐敗の少ない暗渠疎水材ならびに産業廃棄物処理の方法として暗渠疎水材への利用を考え、透水性能を検討したものである。
  • 技術・情報の適用効果
    • カキ殻の透水係数は原殻で8×10cm/s、破砕殻10mm以下では6×10-1cm/sと若干小さい値を示したが、10mm以上並びに分離前の破砕殻では2~5×10cm/sとモミガラの5×10-1cm/sより大きかった(表1、図1)。
    • カキ殻は間隙量が大きいため土砂混入による透水性の低下が懸念されるが、試験結果では土砂の混入によっても、1~1×10cm/sの範囲であり、現地採取の土砂混入(混入密度0.5~0.9g/立方センチメートル)から判断して、土砂混入による透水性低下の心配はない(表2)。
    • カキ殻への土砂混入は試験施工、現地調査の土壌断面観察から判断すると、ほとんどが施工時によるもので、施工管理を十分に行えば経年変化に伴う土砂混入による透水性低下の心配は少ない。
    • 暗渠排水の水質については、人畜に有害な物質はなかった。
    • 施工時における圃場麺での散乱カキ殻による農作業上での障害並びに水稲生育に及ぼす影響については、支障は認められなかった。
    • 施工後の排水処理については、経年変化が短く材料間での比較は困難であったがモミガラに比し遜色はなく、優れた面も見られた。
  • 適用の範囲
    施工歩掛かり等の経済評価が今後の問題として残るが、運搬距離の短い沿岸地帯の暗渠疎水材として利用が可能である。
  • 普及指導上の留意点
    • 使用に当たっては1年以上放置していたものが望ましい(塩害の予防上)
    • 施工歩掛かり(運搬費、施工手間)がモミガラに比し高くなる

具体的データ

表1.カキ殻の透水係数

 

図1.混入土性別泥土含有透水係数

 

表2.疎水材部分への土砂混入実態

 

その他の特記事項

  • 研究課題名:カキ殻の暗渠疎水材としての利用について
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:昭和63~平成元年
  • 発表論文等:古木、長利:暗渠疎水材としてのカキ殻の利用について、農土誌Vol.58、No.8(1990)