作物選択のための経営的意思決定支援システム
要約
- 担当:東北農業試験場・農村計画部・地域計画研究室
- 部会名:総合農業
- 分科会名:経営
- 分類:(1)
成果の内容
- 技術・情報の内容及び特徴
- 本システムは気象条件が作物選択の重要な決定要因となっている地域における経営主体の作物選択に関する意思決定を支援する目的で開発した。当該システムは、大きく分けてデータベース管理、作物選択ならびに統計分析に関する3つのサブシステムから構成される。
- 本システムの最大の特徴は、作物ごとに作成された分析データを解析して、各作物の経営への導入適性指標を作成するとともに、分析対象農家の作物選択に関する経営的価値判断構造を階層構造分析法(AHP)を用いて定量的に把握して、各農家の経営的価値判断の特性に従った場合に、選択するのが望ましい作物を総合的に決定することができる点にある。
- 作物選択に関する経営的価値判断の基準として設定したのは、各作物のa)冷害に対する強さ、b)収益性、c)価格変動の特徴ならびに需要の動向、d)生産に要する時期別の労働投入特性、e)連作障害に対する強さ、の5つである。
- 各作物の経営への導入適性指標は全て客観的に測定可能な情報に基づいて作成されている。冷害に対する強さは最高収量に対する冷害時収量の比率から、収益性は10a当り所得、1時間当り所得、流動資本1万円当り粗収益から、価格変動の特徴や需要の動向は時期別の市場価格の変動係数・時間に対する回帰係数および価格伸縮性推定値から求めている。
図1.システムの処理概要
図2.分析結果の出力例
- 技術・情報の適用効果
本システムを用いることによって、分析対象農家の作物選択に関する判断基準の特徴が定量的に明確になるとともに、その考え方に基づいた場合に経営へ導入することが望ましい作物を決定することができる。そのため、これまで個々の農家の選好構造に対する配慮が不十分であったため形式的な経営診断が中心であった普及所、農協等における営農相談活動の実用性を飛躍的に改善することができる。また、線形計画法などの経営設計手法と結合することによって実用的な経営の診断・設計を支援することができるであろう。
- 適用の範囲
本システムは、現在岩手県を対象にデータベースを作成し実証中であるが、地域ごとにデータベースを作成するならば、全国どこでも利用可能である。システムはNECPC-9801シリーズ(OSはN88-BASICもしくはMS-DOS)で利用できる。
- 普及指導上の留意点
本システムの実用性を高めるためには、分析対象地域の特性を的確に表わす分析データを作成する必要がある。
具体的データ


その他の特記事項
- 研究課題名:輪作体系システムにおける気象変動に対応した経営管理 エキスパートシステムの開発
- 予算区分:別枠「情報処理」
- 研究期間:昭和62年~平成元年
- 発表論文等:
東北農村計画研究第5号(1989.11)、農業経営通信No.162(1989.12)、
「農業生産管理システム構築のための情報処理技術の開発」 研究成果集報(1990.3)