肉用牛における誘起多胎技術の安定化

要約

  • 担当:東北農業試験場・畜産部・家畜繁殖研究室
  • 部会名:畜産
  • 分類:(2)

成果の内容

  • 技術・情報の内容及び特徴
    • 黒毛和種及び日本短角種の誘起多胎生産に必要な2~4個排卵を起こす性腺刺激ホルモン剤の至適投与量は、PMSG1000~1500IU1回投与と推定された(表1)。
    • まき牛繁殖と組合せた日本短角種の野外試験では交配後20~24日での受胎率87%(13/15頭)、40~50日での多胎率53%(8/15頭)が得られ、放牧牛における簡便な多子生産技術になることを認めた。このとき、AIテスタによる膣底電気抵抗値測定が野外における早期妊娠診断法として活用できる(図1)。
    • 日本短角種では、HMG100IU1回投与で2個排卵の確率が高いことが示唆された(表2)。
  • 技術・情報の適用効果
    誘起多胎技術は高度な操作・技術を必要としないため、肉用牛の実用的な多子生産技術として生産現場に導入できる。とくにまき牛繁殖が主体の日本短角種では、誘起多胎技術を組合せることによって効率的な子牛生産が可能となる。AIテスタによる妊娠診断は、交配後20日前後で精度の高い診断が可能であるが、多胎の判定はできない。
  • 適用の範囲
    肉用繁殖牛飼養地帯
  • 普及指導上の留意点
    PMSGを用いた場合には過剰に反応する牛があり、このような牛では流・早産が発生し易いので留意する。この点、HMGを用いた場合にはより確実に排卵が2個前後に抑制されることがうかがわれるが、今後のデータ蓄積が必要である。

具体的データ

表1.PMSGの投与量と発育卵胞数及び過排卵成功率

 

図1.PMSGによる過排卵誘起牛の膣底電気抵抗値の推移

 

表2.日本短角種のHMG投与による卵巣反応

 

その他の特記事項

  • 研究課題名:誘起多胎子安定生産技術の確立
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:昭和61~平成元年度
  • 発表論文等:肉用牛研究会報44(1987)、日本畜産学会第80回大会(1988)、家畜人工授精113巻11号(1989)