IADLによる農村高齢者の生活自立度の把握とその動向

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要約

  • 担当:東北農業試験場 農村計画部 地域社会研
  • 部会名:経営
  • 分科会名:
  • 分類:(4)

成果の内容・特徴

  • 技術・情報の内容及び特徴
    農離れや過疎化を背景としてますます乏しくなる農村の人材をできる限り農業生産 に導くためにも、農村高齢者は介護を必要としない自立した生活の可能な高齢者で あることが第一に望まれ、高齢者の生活自立度が問題となる。今後も高齢化の進行 が予側されるなか、地域計画においては以下の高齢者の能力推移を踏まえた福祉面 での計画策定が求められる。
    1.自立した生活を営むにあたって最も基礎的な能力となる日常生活動作能力(ADL)は、 「ひとりで風呂に入る」「ひとりで着替える」等の指標によって把握される。これ らの能力については85歳以上で衰えが目立ち、特に歩行、入浴等の基本的動作で 支障をきたすため、80代後半からは自立した生活を送ること自体難しい。
    2.他方、日常生活動作能力よりも身体的・知的に高度であるとされる手段的日常生活 動作能力(IADL)は、施設以外の"地域"で暮らす高齢者の生活自立度を把握する際の 一尺度となる。
    3.把握に際しては、従来IADLの測定に用いられている指標を地域の実態により即した 形に改良して用いることが重要である。なお「食事の支度」「食料品・日用品の買 い物」「預貯金の出し入れ」「自己にかかわる書類の作成」「はじめての医者に対 する病状の説明」「バス等による外出」「ニュース等情報への関心」「自己の健康 管理」の8指標は、現在一般的な農村高齢者が地域でひとりで暮らしていくうえで 不可欠な事項である。
    4.各指標における達成のレベルを点数化した結果によると(表)、前期高齢者(65~74歳)に比べ、後期高齢者(75歳以上)ではIADLの総得点 の分布にばらつきが生じ、生活自立度に著しい個人差があらわれる(図1)。さらに生活自立度測定の指標となった個々のIADLについて は、自力でできるとする後期高齢者が激減する。特に女子高齢者の場合でも後期 高齢者となると「食事の支度」を自力で行える人は半数を割る実態が明らかである(図2)。また農業のみの経験者に比べ、地場産業 のみの経験者に生活自立度の高い人の割合が大きく、生活自立の程度は、加齢だけ ではなく過去の就業経験が影響していると予測される(注)。
  • 技術・情報の適用効果
    農村において高齢者及び高齢化対策を行う際の事前情報として、高齢者のより的確 な実態を把握し施策に反映させることができる。
  • 適用の範囲
    行政部局
  • 普及指導上の留意点
    対象者となる高齢者のどの年齢層を中心に生活自立度を把握するかにより、日常生活 動作能力のレベルでの指標を設定する必要がある。また、対象地域の生活実態を反映 したワーディング等の吟味にも留意しなくてはならない。

具体的データ

表 生活自立度のレベル測定項目

図1 生活自立度の分布状況

図2 生活自立度の高い人の8指標における割合

注

その他

  • 研究課題名:地域農業確立のための地域社会の再編成条件
                      1)むらづくりにおける高齢者活動活性化条件の解明
  • 予算区分 :経常研究
  • 研究期間 :平成元年~3年
  • 発表論文等:なし