ササニシキマルチラインによるいもち病発病抑制効果とその作用機作

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要約

試験圃場で優勢ないもち病菌レースに侵害されるササニシキ同質遺伝子系統を組み合わせて混植したところ、葉いもち・穂いもちとも発病が抑制された。また、その抑制効果にはバリヤー効果と誘導抵抗性が関与することが判明した。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・水田病害研究室
  • 連絡先:0187-66-1221
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 対象:稲類
  • 分類:指導

背景・ねらい

真性抵抗性遺伝子を持つ品種の罹病化防止対策としてマルチラインが有効であることは 数種の作物で報告されている。しかし、スーパーレースの出現によるマルチライン抵抗性系統の ブレークダウンが懸念され、真性抵抗性品種の安定的利用法として有効性が疑問視 されている。また、マルチラインによる病害発病抑制作用の解明の研究は少ない。 そこで、試験圃場で優勢に分布するいもち病菌レースに侵害されかつ圃場対抗性が 弱いササニシキ同質遺伝子系統を組み合わせて混合栽培した場合のいもち病の影響を 調べ、マルチラインの病害抑制メカニズムを解明する。

成果の内容・特徴

  • 試験圃場の優占レースに侵害される系統(Pi-a系統、Pi-i系統、Pi-k系統)を組み合わせて混植(比率1:1)した場合には、抑制効果はおもにいもち病発病度に影響し、葉いもちと穂いもちの発病度がそれぞれ10~50%程度抑制された(図1、図2)。
  • ササニシキ(Pi-a系統)とその同質遺伝子系統9系統を種子で混合して栽培した場合のいもち病の発病度を調査した結果、それぞれの系統を個々に栽培した場合の発病度と比較して、葉いもちは1/2以下に、穂いもちは2/3以下に抑制された。
  • ササニシキマルチラインのいもち病発病抑制に関与する要因の検討を行ったところ、 異なる遺伝子を持つイネ系統の混合栽培によるバリヤー効果に加えて非親和性いもち病菌に よる誘導抵抗性が関与することが判明した(図3、図4)。

成果の活用面・留意点

ササニシキマルチラインは圃場抵抗性が弱いことから、今後病害防除にマルチラインを りようするにあたっては圃場抵抗性が強く優良形質を有する品種のマルチラインンを 育成過程から開発する必要がある。

具体的データ

図1 ササニシキ同質遺伝子系統の単植区および混植区における葉いもち発病度

図2 ササニシキ同質遺伝子系統の単植区および混植区における穂いもち発病度

図3 親和性菌および親和性・非親和性菌を伝染源としたササニシキ同質遺伝子系統単植区・混植区における葉いもち発病度

図4 親和性菌および親和性・非親和性菌を伝染源としたササニシキ同質遺伝子系統単植区・混植区における葉いもち発病度

その他

  • 研究課題名:イネいもち病誘導抵抗性の発現機構解明と利用技術の開発
  • 予算区分 :経常・一般別枠(安全向上)
  • 研究期間 :平成4年(平成2~4年)
  • 発表論文等:ササニシキ同質遺伝子系統混合栽培のいもち病発病に及ぼす影響
                        日本植物病理学会報 第57巻1号 1991、
                      ササニシキ同質遺伝子系統の種子混合栽培におけるいもち病の発生
                        日本植物病理学会報 第58巻1号 1992、
                      ササニシキマルチラインの葉いもち発病抑制に関与する要因
                        日本植物病理学会報 第59巻1号 1993、