他用途向け超多収水稲新品種「ふくひびき」
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
「ふくひびき」は他用途向け、超多収を目標に育成された多収品種で、東北地域では中生の短稈穂重型に属する。外観品質や精米歩合は一般品種並であるが、酒造用掛米としての適性や米菓加工適性が高く、福島県で奨励品種に採用された。
- 担当:東北農業試験場・水田利用部・稲育種研究室
- 連絡先:0187-66-1221
- 部会名:水稲
- 専門:育種
- 対象:稲類
- 分類:普及
背景・ねらい
米の需要の維持拡大の一方向として多収化によりコスト低減を図り、他用途利用を促進
することが提唱され、超多収プロジェクト及び新形質米プロジェクト研究が実施されてきた。
そしてこの中の逆7・5・3計画に示された収量目標を達成するために超多収品種の育成が
行われてきた。一方、清酒の級別制が廃止され、酒造関係者の原料米に対する関心が急速に高まっている。特に掛米については良好な酒造特性(精米耐性、低蛋白、低ホルモール窒素、高い直糖など)と低価格が重要視され、酒造適性を備えた多収品種が求められている。
成果の内容・特徴
-
「ふくひびき」(旧系統名:奥羽331号)は超多収を目標に「コチヒビキ」/「82Y5-31(奥羽316号)」の組合せから育成された短稈・穂重型品種で熟期は「キヨニシキ」並の中生である。収量性はごく高く、多収品種の「アキヒカリ」より数%~10%、「あきたこまち」より20%程度多収である。
- 外観品質は「アキヒカリ」並の中で、精米歩合は比較品種と大差なく、蒸米の消化性としての直糖はやや高く、ホルモール窒素や粗蛋白質は低いなど酒造用掛米としての適性がある。
- 本品種を原料とした浮かせタイプ米菓、堅焼きタイプ米菓とも、浮き、伸び、風味などが良好で、米菓加工適性が高い。炊飯米の食味は「キヨニシキ」に近い。
- 福島県では会津地方を中心に極多収が期待され、酒造用掛米等2,000haの普及が見込まれる。
成果の活用面・留意点
-
本品種は東北中南部及び北陸、東海地方の平坦部に適応し、掛米のほか米菓加工用など
他用途米の生産に活用できる。
- 掛米を生産する場合は蛋白含量をあげないため極端な多肥栽培は避け、実肥の施用は控える。
- 本品種は耐冷性がやや弱いので、冷害の発生しやすい地帯での栽培は避ける。
- いもち病真性抵抗性遺伝子Pi-bをもち、一般のレースには侵されないが、圃場抵抗性は
中~やや強程度であり、発病をみたら一般品種並の防除を行う。
具体的データ



その他
- 研究課題名:寒冷地北部向け新形質・超多収品種の育成
- 予算区分 :総合的開発研究(超多収、新形質米)
- 研究期間 :平成4年(昭和57年~平成4年)