牛体外受精卵の胚盤胞への発生率向上技術

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要約

過剰排卵処置時に反応良好であった牛の血清を添加したTCM199が用いて2%炭酸ガス濃度で卵丘細胞を共培養し、さらに媒精54時間後からβ-メルカプトエタノールを添加することにより、牛体外受精卵の胚盤胞への発生率が向上する。

  • 担当:東北農業試験場・畜産部・家畜繁殖研究室
  • 連絡先:0196-41-2145
  • 部会名:畜産
  • 専門:繁殖
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

牛胚を得る方法の一つとして体外受精技術が開発されたきたが、体外培養系が十分ではなく、移植可能な胚盤胞を高率に得るためには家兎の卵管等を一時的に利用する必要があった。 この制約を取り除き、受精直後から胚盤胞までの発生を維持する完全な体外培養系を確立し、安定した胚生産を図る。

成果の内容・特徴

  • 発生培地に添加する血清として過剰排卵処置時に反応良好であった牛より採取した過剰排卵処置牛血清(8日目)を用いた場合に、卵割率及び胚盤胞への発生率が他の血清に比べて有意に高くなった(表1)。
  • 過剰排卵処置牛血清添加発生培地を用いて2%あるいは5%炭酸ガス濃度で培養を行った結果、卵割率に差は認められないものの、2%炭酸ガス濃度において、胚盤胞への発生日が早まるとともに有意に胚盤胞への発生率が向上した(表2)。
  • 過剰排卵処置牛血清添加発生培地を用いて2%炭酸ガス濃度で培養を行い、媒精54時間後の初期発生確認時に4細胞期以上に発生した胚を用いて、β-メルカプトエタノール添加発生培地で卵丘細胞をの共培養を継続し、胚盤胞への発生に及ぼす影響を調べた結果、10日目までの全期間を通しての胚盤胞への発生率には差はないものの、8日目までで比較すると10μM添加区は無添加区あるいは50μM添加区に比べて有意に高くなった(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 体外受精技術の安定化・効率化のための技術知見となる。
  • 過剰排卵処置牛血清は過剰排卵処置時の発情後4~8日目に採取し、正常胚の回収率の高かった牛の血清を用いること。
  • β-メルカプトエタノールは、酸化しやすいために保存には注意すること。

具体的データ

表1 添加血清の種類が牛体外受精卵の発生に及ぼす影響

表2 炭酸ガス濃度が牛体外受精卵の発生に及ぼす影響

表3 βーメルカプトエタノールの添加が牛体外受精卵の胚盤胞への発生に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:初期胚の体外培養系の開発
  • 予算区分 :一般別枠(体外受精)
  • 研究期間 :平成4年度(昭和63~平成4年)
  • 発表論文等:発生培地への添加血清の種類が牛体外成熟・体外受精卵の胚盤胞への発生に及ぼす影響、
                      日本畜産学会報、64巻5号、1993。
                      卵丘細胞との共培養における気相中CO2濃度あるいはβ-メルカプトエタノールの
                      添加がウシ体外成熟・体外受精卵の胚盤胞への発育に及ぼす影響、
                      日本畜産学会東北支部会報、42巻2号、1992。(講演要旨)