子牛飼料としての中鎖トリグリセリドの利用
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要約
脂肪酸の炭素数が8および10の中鎖トリグリセリド(MCT)を子牛飼料に添加(10%以下)給与することで、有効なエネルギー源となる。夏期における飼料の劣化防止にも有効である。
- 担当:東北農業試験場 畜産部 栄養生理研究室
- 連絡先:0196-41-2145
- 部会名:畜産(家畜)
- 専門:飼育管理・動物栄養
- 対象:家畜類
- 分類:指導
背景・ねらい
油脂工業の副産物として中鎖脂肪酸が派生している。中鎖脂肪酸のトリグリセリド(中鎖トリグリセリド;MCT)は吸収されやすく、体内輸送系も長鎖脂肪酸と異なり速やかに代謝されるので、医療面等で利用されている。一方、粗製のMCTの畜産的利用についても関心が寄せられている。MCTの飼料としての利用に関して、第一胃内発酵に及ぼす影響、長期給与時の発育や飼料消化性、血液性状などに及ぼす影響を解明し、その給与法を検討した。
成果の内容・特徴
- 炭素数が8および10の脂肪酸からなる(約6:4)トリグリセリド(中鎖トリグリセリド;MCT)を子牛に給与して飼料消化、代謝および発育への影響を調べた。
- MCT給与子牛においては、第一胃内の繊毛虫が著しく減少あるいは消失し、揮発性脂肪酸(VFA)アンモニア濃度が低く推移した(図1)。
- 飼料のCP水準が15%の時にはMCTを給与しても繊維の消化率は低下しなかった。が、低蛋白質(CP約10%)の条件下では低下した。しかし、発育が進むと対照区との
差が消失し(24~28週齢)、発育の低下も認められなかった(表1、2)。
- 哺乳子牛でも液状飼料のエネルギー濃度を高めるためにMCTを利用できる。
- MCT給与では長鎖トリグリセリド(LCT)給与と異なり、血漿脂質濃度が上昇しない(表3)。
- MCT摂取直後には肝臓でのケトン体合成が活発になるが、そのケトン体は急速に代謝・利用され、体内に蓄積することはない。
- MCTを添加した飼料では夏でも害虫の発生が非常に少ない。
成果の活用面・留意点
MCTは急速に代謝されるので寒冷期の子牛においては有効なエネルギー源になる。
また、濃厚飼料の昆虫発生・劣化の防止にも有効である。
このMCT(炭素数8、10のMCTの混合物)は液体であり、飼料の取り扱いなどの点から、濃厚飼料への添加量は10%以下とする。
具体的データ




その他
- 研究課題名:飼料の化学・物理的処理による発酵調節技術の開発
- 予算区分 :別枠(体外受精)
- 研究期間 :平成4年度(昭63~平4)
- 発表論文等:中鎖脂肪酸給与が飼料消化性、第一胃内発酵および血液成分に及ぼす影響、
日畜会報、62巻2号、1991。 日畜会報、64巻6号、1993。