耐寒雪性・高製粉性小麦新品種「あきたっこ」

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要約

「あきたっこ」はキタカミコムギより2~3日早生で、耐雪性が優れ、子実収量は 標準栽培、ドリル播栽培、晩播栽培ともにやや多収である。また、キタカミコムギより外観上の品質と製粉特性は優れる。

  • 担当:東北農業試験場 作物開発部 麦育種研究室
  • 連絡先:0196-41-2145
  • 部会名:畑作物
  • 専門:育種
  • 対象:小麦
  • 分類:普及

背景・ねらい

小麦は転換畑の土地利用型作物として、高品質、安定多収品質の開発が求められている。 特に、北東北地域ではこれまで栽培されていなかった中~多雪地帯にも作付されるように なってきたため、耐雪性に優れた品種が要望されている。 昭和50年度(昭和51年5月)東北農業試験場において多収性、耐病性、強稈性の 東北143号」(後のワカマツコムギ)と早生、良質の「東北144号」を人口交配 を行った後、系統育種法によって選抜・固定を図ってきたものである。

成果の内容・特徴

  • 叢性はやや葡匐し、草姿はキタカミコムギに類似している。穂型は棒状で、 芒は やや多でやや長く、ふ色は淡黄で、粒色は赤褐色である。
  • 播性程度はVの秋播性で、成熟期はキタカミコムギよりやや早い。
  • 耐雪性はキタカミコムギより優る。
  • 穂発芽性はやや易で、キタカミコムギと同程度である。
  • 収量性は中程度で、いずれの栽培条件でもキタカミコムギよりやや多収である。
  • 粒質はやや硝子質である。千粒重は中で、リットル重はやや大で、外観品質は中の上で、 キタカミコムギよりやや優れる。
  • 製粉歩留、ミリングスコアはキタカミコムギより優れる。小麦粉の白さはやや高く、 キタカミコムギと同程度である。
  • 小麦粉の明るさ、ゆでめんの総合評価はキタカミコムギと同程度である。

成果の活用面・留意点

活用面:キタカミコムギより耐雪性に優れているため、根雪期間が110日程度までの 東北・北陸地域の中~多雪地域に適する。
留意面:転換畑では排水対策に努めること。暖冬年では穂数過多による倒伏や5月の 高温では赤さび病の発生が懸念されるため、融雪期の追肥を控え、減数分裂期のみとする。 赤さび病の発生が予見される場合には薬剤を散布する。 また、穂発芽性はキタカミコムギ程度のため適期収穫に努める。

具体的データ

表1 栽培試験成績

表2 特性検定試験

表3 品質試験成績

その他

  • 研究課題名:高製粉性中間母本及び品種の育成
  • 予算区分 :経常、総合的開発研究(水田畑作、高品質輪作)
  • 研究期間 :平成4年度(昭和50年度~平成4年度、昭和62年度~平成4年度)
  • 発表論文等:伊藤誠治、星野次汪、佐藤暁子、渡辺満.1993.小麦新品種「あきたっこ」.農業技術48,221