東北地域の水田におけるホタルイ類雑草の分布と出芽の年次変動

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要約

東北地域の水田に発生するホタルイ類雑草の草種はイヌホタルイおよびタイワンヤマイ である。両種の間には種子の休眠性および出芽特性に差異があり、出芽率の年次変動 の要因として種子の休眠覚醒に及ぼす土壌中の温度条件が重要である。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・雑草制御研究室
  • 連絡先:0187-66-2771
  • 部会名:水稲
  • 専門:雑草
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ホタルイ類雑草はホタルイに形態の類似する複数の草種を指すが、これらの雑草は種によって生態的特性が異なり、合理的な防除法確立のためには区別して扱う必要があるため、東北地域の水田における発生草種を調査した。また、東北地域でホタルイ類雑草が難防除雑草となっている原因として、発生期間が長く不均一であること(不斉一発生)が考えられるため、要因解明のために種子の発芽及び出芽に関する基礎データの蓄積を行った。

成果の内容・特徴

  • 東北地域の水田におけるホタルイ類雑草の草種はイヌホタルイとタイワンヤマイで、タイワンヤマイが大河川の下流域や、日本海側及び山間の豪雪地帯に多い傾向にあるが、調査地点の60%で両種が混在しており、東北においてはこれら2種を念頭に置いた防除体系の組立が必要である(図1)。
  • イヌホタルイとタイワンヤマイの出芽は30~15度Cの範囲では温度の高いほど良好で、出芽の最適温度は発芽の最適温度と同様に30度C前後である(図2,図3)。
  • 湛水土壌中における貯蔵温度は比較適低温(20~15度C)での出芽率に影響し、イヌホタルイとタイワンヤマイでは出芽に好適な貯蔵温度が異なる(図2)。
  • 圃場の土壌中から回収した種子の屋外条件と15度C条件における出芽率に明瞭な年次変動が認められ、年次変動の傾向はイヌホタルイとタイワンヤマイで異なる(図3)。
  • 湛水土壌中における貯蔵温度は種子の休眠覚醒程度に影響し、種子の休眠覚醒にイヌホタルイはタイワンヤマイよりも低温の要求性が強い(図4)。
  • 以上の結果、イヌホタルイとタイワンヤマイは種子の休眠覚醒特性および出芽特性が異なり、趣旨の休眠覚醒および出芽率に湛水土壌中の貯蔵温度が大きく影響することから、出芽の年次変動の要因として土壌中の温度条件が重要である。

成果の活用面・留意点

土壌中の貯蔵温度と出芽率との関係は、ホタルイ類雑草の発生量および発生草種の予測のための基礎データとして利用できる。その際、冬~春の地温が重要な要因と考えられるが、代かき以降の短期的な温度変動が発生消長に影響することが指摘されており、気象条件と出芽の年次変動との関係についてはさらに検討を要する。

具体的データ

図1.東北地域の水田におけるホタルイ類雑草の分布

 

図2.貯蔵条件を異にするイヌホタルイとタイワンヤマイの各種温度条件下での出芽率

 

図3.年次を異にするイヌホタルイとタイワンヤマイの各種温度条件下での出芽率

 

図4.湛水土壌中における貯蔵温度と種子の休眠覚醒程度

 

その他

  • 研究課題名:汎用水田雑草の生態的特性の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5年度(平成元年~平成6年)
  • 発表論文等:
    東北地域の水田におけるホタルイ類雑草の分布、雑草研究、36巻2号、1991
    ホタルイ属雑草の発生に関する研究2.ホタルイ類種子の発芽および出芽の年次変動、雑草研究、39巻別I号、1994