低温期の作物生育を促進するべたがけ下の溝底播種法

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要約

ハウス内のべたがけ下に深さ5cm、幅約10cm程度の連続した溝を作り、この底部に こまつな等を播種すると、べたがけだけの場合に比べて夜間の地温と、一日を 通じた葉温が高まり、低温期の生育が著しく促進される。溝を成型しながら連続播種 する溝底播種機を開発した。

  • 担当:東北農業試験場・地域基盤研究部・気象環境制御研究室、岩手県久慈農業改良普及所
  • 連絡先:019-643-3462
  • 部会名:生産環境
  • 専門:農業気象
  • 対象:茎葉菜類
  • 分類:普及

背景・ねらい

こまつな・ほうれんそう等の葉菜類は、無加温のハウスで多く栽培されている。これら作物の低温期の生育促進には、保温が必須である。特に寒冷地では、生育促進が作期の拡大につながるため、保温技術に対する期待が大きい。しかし、カーテンやトンネル等による多重被覆は、過湿による障害を招くことが多く、これに代わる技術開発が望まれている。

成果の内容・特徴

  • 無加温ハウス内のべたがけ下に、深さ5cm、幅10cm程度の連続した溝を作り、この底部に播種する(図1)。これを「べたがけ下の溝底播種法」と名づけた。また、市販の人力播種機の鎮圧輪を算盤玉状に改造し、溝底播種機を開発した。
  • この方法には、地域の実情にあわせて、低温伸長生の高い作物・品種を使う必要がある(表1参照)。
  • 播種位置から同じ深さでの地温は、日中は従来法で高く、夜間は溝底播種法で高い。また、葉温は一日を通じて溝底播種法で高い。溝底播種法の温度上昇は、日射量の多い日の午後と、ひき続く夜間で大きい(図2)。
  • 発芽が早まり、生育が促進されるので、収量は著しく増加する。また、凍害も減少するので、外観の品質低下が軽減される(表2)。例えば、盛岡の厳冬期にはこの方法によって、こまつな、および、べかな・さんとうさい等の不結球性はくさいの経済栽培が可能になる。

成果の活用面・留意点

  • べたがけをしないと、溝底播種の効果はほとんど望めない。
  • ハウス外でもこの方法の効果は大きいが、雨水が溝の底にたまり、発芽を阻害したり湿害を起こすことがある。
  • この方法の効果は、日射が豊富な地域で高い。

具体的データ

図1.べたがけ下の溝底播種法と従来法 表1.葉菜類の低温伸長性の差と低温に対する生育反応の特徴

 

 

図2.溝底播種法と従来法で栽培したこまつなの葉温差と地温差の日変化

 

表2.こまつなの収量と凍害に及ぼす溝底播種の影響

 

その他

  • 研究課題名:うね形状の違いによる地温制御技術の開発
  • 予算区分:経常研究
  • 研究期間:平成5年度(平成4~6年)
  • 発表論文等:
    べたがけ下のうねの形状と冬作コマツナの生育、日本農気学会要旨、1992
    冬の盛岡の無加温ハウスで軟弱野菜を作る、東北の農業気象38、1993