水耕方式による水稲育苗装置

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要約

養液中に水稲種子を直接播いて養液の循環量・濃度・温度等を制御する 水耕方式で水稲苗マットを育苗する育苗装置を開発した。 水稲育苗作業の省力化が図れるとともに汎用水耕装置として利用が 可能となる。

  • 担当:東北農業試験場・地域基盤研究部・施設工学研究室
  • 連絡先:0196-43-3463
  • 部会名:作業技術
  • 専門:機械
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景・ねらい

稲作においては規模拡大や土地生産性向上による生産コストの大幅低減が要請されている。そこで、水稲移植栽培における省力化および水耕装置の汎用利用を図るために、水耕方式を用い、培土等育苗資材を用いず養液中に水稲種子を播き、養液・温度等を制御して育苗する水稲育苗装置を開発した。

成果の内容・特徴

  • 水耕方式による水稲育苗装置(図1)は、育苗ベット、養液タンク、養液ポンプからなる育苗部と肥料原液タンク、定量給ポンプからなる肥料供給部および各種センサとコンピューターからなる制御部で構成される。水稲苗を育苗する育苗槽は幅30cm,長さ120cm,深さ5cmで、養液噴出部・排出部とは堰で仕切られている。
  • 育苗は、催芽した水稲種子を育苗槽に直接播き、養液の循環量、水温、pH等をコンピュータにより自動的に制御して行う。なお、培養液は木村氏B液(水稲水耕用培養液)処方に基づき調製した混合液を用いる。(表1)。また、各種支持板を使用すれば水耕装置としても使用が可能である(図2)。
  • 本装置は、幅30cm、長さ120cmまで自由な大きさの水稲苗マットの制作が可能である。育苗した苗は根が大きく伸長して強くからみあっており(表2)、圃場へロール状にして運搬できるなど取扱性が良い。また、重さは約2kg(育苗箱1箱換算)と軽量である。
  • 育苗管理はコンピュータが行うため、苗箱の移動や水管理が不要となり、育苗作業の省力化が図れる。

成果の活用面・留意点

  • 水稲育苗施設や水耕施設において、水稲の育苗及び他作物の水耕栽培が可能な汎用水耕装置として活用できる。
  • 水稲苗の苗質をより向上させるための養液成分や濃度等最適育苗条件および移植精度を向上させるための田植機の爪形状や掻き取り方式等を検討する必要がある。

具体的データ

図1.水耕方式による水稲育苗装置の概要

 

表1.木村氏B液組成表

 

図2.水耕方式による水稲育苗および野菜栽培

 

表2.水稲苗の生育

 

その他

  • 研究課題名:ハイドロポニクス汎用作物生産施設の開発
  • 予算区分:経常研究
  • 研究期間:平成5年度(平成3~6年)
  • 発表論文等:水稲育苗用ハイドロポニクス育苗装置の開発、農業機械学会講演、1992