地下水流脈位置を推定するための効率的な地温探査実施方法

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要約

地温探査法は地下で地下水流動が局所的に集中している部分 (地下水流脈)の位置を調べる方法として有効である。 網査範囲が広い場合には概査として 20m間隔で地温測定を行ったうえで 4~5m間隔の精査を行う方法が効率的である。

  • 担当:東北農業試験場・農村計画部・基盤整備研究室
  • 連絡先:019-643-3497
  • 部会名:作業技術
  • 専門:農地整備
  • 対象:農業工学
  • 分類:普及

背景・ねらい

地下水は一様に流れているのではなく.礫質土の堆積層などの透水性の高い部分に局所的な水みち(地下水流脈) を形成しており,その位置や規模を把握することによって効果的な排水対策をたてることができる。地温探査法は地下水流に起因する地温異常を検出することによって地下水流脈の位置を調べる簡便な方法であるが,対象面積か数へクタール以上ある場合には,できるだけ測点数を減らして調査の省力化をはかることが望まれる。

成果の内容・特徴

地温異常を解析することによって地下水流脈の半径や中心深度を算定するためには.6m以下の間隔で地温測定をする必要がある。しかし,流脈による1m深地温の異常は流脈をはさむ25mの範囲に及ぶので,測点間隔を20mとしても地温異常域を検出することがてきる。地温は地表の植生の状態など(地況)の影響も受けているが, 20m間隔で連続する3測点は同じ地況のまとまりの中にあると考えられるので,ある測点の地温がその両隣の測点の地温の平均値に比較して差がある場合には,その測点は地下水流脈の影響下にあると考えられる。測点間隔を20mにして全体的な地温異常域を抽出したうえで.部分的に細密調査をすることにより,調査範囲が広い場合でも地況などの影響を考慮せずに概ね深度10mまでを対象として地下水流脈の位置を推定することができる。本法による調査手順を 図1に示す。

適用事例:

新第三紀泥岩地帯にある標高300~430mの傾斜地において、地下水流脈状況と地区内にあるため池からの漏水の調査を行った。実施日は9月なので、流脈の影響は地温低下として現れる。 図2 に示すように測線を設定し,D~Oの測線では20m間隔で概査を,その他の測線では4m間隔で調査を行った。地下水流脈は全体として, 図2 のように存在することが推定された。また、ため池堤体上の測線A の精査結果の解析から得られた堤体部断面の状況を 図3に示す。地温異常を解析する際のパラメータ(地下水温)として、地山内地下水の水温と地下水より温度が高いため池漏水の水温のどちらが適合性が高いかということを考慮して,両者を分別した。

成果の活用面・留意点

地温探査は地温と地下水温との差に基いているので,季節的には2~3月及び8~9月が調査適期である。本方法は容易に実施できるので,他の調査方法と組み合わせて行うことにより,多面的な水文地質構造調査が可能になる。

具体的データ

図1.地温探査の手順 図2.概査による地下水流脈位置の推定例

 

 

図3.ため池堤体の精査による地温分布及び推定流脈の状況

 

その他

  • 研究課題名:畑の湿害防止技術の開発
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成4~7年
  • 発表論文等:疎な測点配置の地温探査によって地下水流脈位置を推定する方法 農業土木学会論文集投稿中