冷害研究のための温度勾配チャンバーの利用
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要約
棟方向に長いプラスチックハウスの長軸方向に連続通気することにより、
外気温十数度Cの気温勾配を作出する温度勾配チャンバーを開発した。低温期にこの
チャンバーを利用すると、冷害研究に有効な障害不稔や出穂遅延等のデータを簡便
に得ることができる。
- 担当:東北農業試験場・地域基盤研究部・気象環境制御研究室
- 連絡先:019-643-3462
- 部会名:やませ研究
- 専門:農業気象
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
1993年度の冷夏は、水稲の大幅な出穂遅延と強度の障害不稔をもたらした。冷害対策技術の開発には、これらの被害と環境要因との関係の定量的な解析やそれに基づくメカニズムの解明が急務である。そのためには高精度の環焼条件の測定下で、被害程度の異なるサンプルを得る必要がある。特に温度条件の連続的な違いに対する作物反応の連続的な変化を捉えることが、臨界条件の把握や定式化に有効であり。そのための試験装置と利用法を開発する。
成果の内容・特徴
- 温度勾配チャンバーは、間口3.6m、長さ18m、棟高2mのパイプハウス構造で、棟方位は南北である(図1)。南妻面の換気扇は公称風量28m3/分の排気型で、計3台である。北妻面の整流板は縦横3cm間隔に12mmの穴をあけた合板と寒冷紗の組み合わせである。換気扇と整流板以外は、透明プラスチックフィルムで隙間なく覆う。東西の側壁に沿って電気温床線を500W×6本配置する。
- 気温測定センサーの配置は、北妻面(外気流入口)から1m、6m、11m、16mの計4ヶ所で、1mと16mの気温差で換気扇と電気温床線を制御する。換気扇2台は常時運転、他の1台は気温差が3度C以上で運転する。気温差が2度C以下で、電気温床線に通電する。
- チャンバー内の気温勾配は日射量や栽植状況に左右されるが、15mの距離で平均2~3度Cを得ることができる(図2)。
- 水稲の障害不稔の例を図3に示す。チャンバーの低温部から高温部にかけて、不稔率の連続的な変化を得ることができる。
成果の活用面・留意点
- チャンバーの気温は外気温に追随するので、低温期に処理期間が当たるようするためには、極端な早播や晩播を含めた作期移動試験等で発育の進み方の異なるサンプルを用意する必要がある。図3の例は6月上旬の播種で、9月上中旬の低温を利用した。
- 気温と地温の関係が屋外の場合と異なるので(図4)、地温影響の解析に注意する必要がある。なお、この間題はチャンバー効果と呼ばれ、被覆下のチャンバーでは避けられない。
具体的データ



その他
- 研究課題名:水稲の発育・収穫予測法の開発
- 予算区分:経常研究
- 研究期間:平成5年度(昭和63~6年)
- 発表論文等:作物の温度反応解析のためのTRC利用、東北の農業気象、37、1992.
A Use of TGC(Temperature Gradient Chamber) to Evaluate Crop Growth Responses to Temperature, Proc. The 3rd Symposium on The Impact of Climatic Change on Agricultural Production in The Pacific Rim, 1993.