やませ地域の主要大豆品種の低温抵抗性評価

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要約

開花期の低温処理による受精率及び結実性の低下度を検討し、品種特性分類 審査基準における低温抵抗性区分への当てはめを試みた結果、抵抗性強の標準品種 「キタムスメ」が指数79であったのに対し、「ワセスズナリ」は56、「スズカリ」は 53で抵抗性中、「ナンブシロメ」は39、「フクナガハ」は37で抵抗性弱と判定される。

  • 担当:東北農業試験場・地域基盤研究部・生理生態研究室
  • 連絡先:019-643-3467
  • 部会名:やませ環境、畑作物
  • 専門:栽培
  • 対象:豆類
  • 分類:研究

背景・ねらい

岩手県北部から青森県にかかる地域は主要な畑作地帯であり、大豆栽培面積も比較的大きいが、度重なる冷害の影響もあって、最近は栽培面積が減る傾向にあり、野菜作が振興されている。しかし、畑の合理的利用を考えると大豆作振興方策の再構築も必要と思われる。その一環として、低温年の収量と品質の安定化を図るため、主要品種の低温抵抗性を評価した。

成果の内容・特徴

  • 道立十勝農試(指定試験地)の耐冷性育種の成果である「キタムスメ」(低温抵抗性:強)を標準品種として、やませ地帯向けの品種について低温抵抗性検定を実施した。
  • 開花期の低温処理後の受精率では、最高が「キタムスメ」の86%、最低が「ナンブシロメ」の52%で品種間に相違が見られるが子実の収量性低下との関係は明かでない(表1)。
  • 子実の収量性では2週間処理の影響が対照比20%減程度で小さく、また、品種間差も明らかでないが、3週間処理では減収程度も大きくなり、その品種間差も明瞭になる。(表1)。
  • この、3週間の低温処理による減収度を指標に抵抗性区分をすると「ワセスズナリ」と「スズカリ」の2品種は抵抗性中、「ナンブシロメ」と「フクナガハ」の2品種は抵抗性弱と判定される(表2)。
  • 早生品種で被害の大きかった昭和63年並の低温年でも、「キタムスメ」並の抵抗性があれば莢先熟することもなく正常に近い状態で成熟することが期待できる(写真1)。

成果の活用面・留意点

大豆では莢付きが悪くなると莢先熟状態になり、収穫作業を困難にするほか、汚粒発生の原因にもなる。やませ地域向けの品種には「キタムスメ」並の低温抵抗性を付与することの意義は大きい事が明らかになったが、ここでの評価は障害型冷害に限定したものであることに留意する。

具体的データ

表1.開花期の低温処理による結実性低下度の品種間差異

 

表2.品種特性分類審査基準を準用した抵抗性区分の結果

 

写真.早生2品種の成熟期の草姿

 

その他

  • 研究課題名:大豆シンク能規制要因の解明
  • 予算区分:経常研究
  • 研究期間:平成5年度(平成3~5年)
  • 発表論文等:やませ霧の微気象特性と作物の障害発生機作の解明(1993研究成果285号)