黒毛和種種雄牛で見出された染色体の転座と繁殖性との関係

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要約

7/21ロバートソン型転座をヘテロに保有する個体では、減数分裂時に 染色体の不分離によって不均衡型の配偶子を生じる。その結果、遺伝的に不均衡な胚 が形成される。それらは出生前に死亡するために、7/21 転座ヘテロ個体では数% であるが繁殖性の低下が起こる。

  • 担当:東北農業試験場・畜産部・家畜育種研究室
  • 連絡先:019-643-3541
  • 部会名:畜産(家畜)
  • 専門:育種
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ロバートソン型転座は、2本の異なる常染色体が動原体部分で融合した染色体の構造的変異である。この転座を保有する個体においては、致命的な障害は認められない。しかし、減数分裂時の染色体の分離様式によっては不均衡型の胚を生じる。本研究では、黒毛和種で確認されている7/21ロバートソン型転座と繁殖性との関連性について検討した。

成果の内容・特徴

  • 7/21転座をヘテロに保有する個体では、減数分裂時に染色体の不分離が起こり、その結果、数%であるが不均衡型の細胞が生じる(図1表1)。
  • 7/21転座へテロ個体の場合、染色体の不分離によって生じた不均衡型配偶子は受精して遺伝的に不均衡な胚を形成する。これらの胚は出生前に死亡するために、7/21転座ヘテロ個体では低率であるが繁殖性の低下が起こる(表2)。
  • 7/21転座ホモ個体の場合、配偶子は交互分離によってのみ形成されるので、繁殖性の低下は起こらない(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 胚の損耗を防止するための基礎資料となる。
  • 胚の死亡時期については、さらに検討を要する。
  • 7/21転座はメンデル式遺伝によって遺伝する。従って、7/21転座種雄牛を人工受精および体外受精に供用することは差し控えるはうが望ましい。

具体的データ

図1.7/21転座をヘテロに保有する種雄牛の分裂中期像

 

表1.減数分裂時の不均衡型細胞の出現頻度と染色体の不分離率

 

表2.7/21転座ヘテロ種雄牛由来の胚の染色体分析

 

その他

  • 研究課題名:ウシにおける染色体多型と生産性との関連性
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5年(平成元年~4年)
  • 発表論文等:
    1) A study of meiotic chromosomes in Japanese Black bulls carrying the 7/21 Robertsonian translocation. 日畜会報、60(6). 1989.
    2) Significance of the 7/21 Robertsonian translocation in the japanese Black breed. Proc. 10th Eur. Colloq. Cytogent. Domest. Anim., 1993.
    3) Chromosome analyses of embryos sired by bulls heterozygous for the 7/21 Robertosonian translocation.  日畜会報、64(12). 1993.
    他関連発表論文4編