粗飼料多給型飼育による「プリンスビーフ」と「さわやかビーフ」生産技術
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要約
日本短角種の雄牛と去勢牛に粗飼料を多給して、良質の赤肉を生産する技術を
開発した。肥育方法は粗飼料をTDNベースで40%給与し、仕上げ目標は雄牛:
20ヵ月、670~750kg、去勢牛:24ヵ月齢、600~680kgとする。
- 担当:東北農業試験場・企画連絡室・総合研究第2チーム
- 連絡先:019-643-3412
- 部会名:畜産(家畜)
- 専門:飼育管理
- 対象:家畜類
- 分類:普及
背景・ねらい
日本短角種は粗飼料の利用性が高く、北東北の地域内循環農業に欠かせない肉牛である。そこで、本品種の特性を活用して、粗飼料多給による良質の赤肉生産を行うことを目的とした。その牛肉は高コストな霜降り肉でなく、超低コストな輸入肉でもなく、低脂肪でジューシーな赤肉タイプである。
成果の内容・特徴
当チームはこれまでに、北東北でも高い祖飼料生産を可能にする1年2作栽培・収穫システムを開発したが(2.7DMトン/10a、平成3年度東北農業研究成果情報)、このシステムで得た粗飼料を使って下記の肥育技術を開発した。
- 雄牛肥育(写真1:プリンスビーフ)
雄子牛にソルガムサイレージ主体の粗飼料を給与水準を変えて飼育すると、その給与水準が高まるに伴って、増体速度の低下傾向が認められる(表1)。これらの結果、並びに雄牛の飼い易さ、肉の硬さなどからみた仕上げの上限月齢を考慮すると、適正な粗飼料のTDN給与水準は40%である(DMr水準;前-中-後期:70-50-30%)。食味アンケートの結果、この牛肉は高い評価が得られたが(表2)、これは従来の濃厚飼養多給による雄肥育の仕上げ月齢を15~16ヵ月から粗桐料多給によって20ヵ月にすることが可能になったことによる。
- 去勢牛肥育(写真2:さわやかビーフ)
去勢子牛をグラスサイレージ主体の粗飼料で飼育すると(TDN給与水準45%)、歩留基準値は74%と高く、濃厚飼料多給の場合よりも脂肪量の少ない赤肉タイプの牛肉が生産される。また、寒さに強い本品種の特性を活用すると、周年屋外飼育が可能である。しかし、冬期間は増体速度が低下するので、とうもろこし+ソルガムサイレージ給与ではTDNrを55%より低くする必要がある(表1)。この牛肉の食味アンケートでは、「普通より良い」以上の割合が雄牛肉よりもさらに高く(表2)、ジューシーな牛肉である。
成果の活用面・留意点
- 東北農試では、この雄牛の牛肉を「プリンスビーフ」、去勢牛の牛肉を「さわやかビーフ」と命名したところ、北東北の本品種飼養地帯でよく知られるようになり、今後、地域特産牛肉として生産が期待できる。
- これらの牛肉の生産・販売は産地直送方式で行う必要があり、その生産・販売システムの確立が必要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:
(1)肥育牛におけるとうもろこし、ソルダムサイレージの給与水準
(2)転換畑飼料作物の活用による低コスト牛肉安定生産技術の体系化
(3)粗飼料活用型飼料給与技術の開発-赤肉生産型肉牛の飼料給与技術
- 予算区分:経常、特研(産肉特性)
- 研究期間:平成5年(平成元年~5年)
- 発表論文等:滝本勇治(1994):地域の立地と品種の特性を生かした牛肉生産、畜産の研究 第48巻(1):187-194.