尿素処理によるワラ類の貯蔵性と飼料価値の改善

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要約

水分を含む麦ワラや稲ワラに尿素を添加してサイレージ化すれば、材料自体 のウレアーゼ活性により貯蔵中にアンモニアが生成し、開封後の好気的変敗を抑え、 また、採食性や飼料価値を高めることができる。

  • 担当:東北農業試験場・草地部・飼料調製研究室
  • 連絡先:019-643-3564
  • 部会名:畜産(草地)
  • 専門:動物栄養
  • 分類:指導

背景・ねらい

ワラ類の貯蔵性と飼料価値を高めるアンモニア処理が普及しているが、作業面や経費面が難点となっている。そこで、取扱が容易で安価な尿素をアンモニア源とした処理を検討した。この処理では尿素の分解速度が重要であるので、処理条件(水分、温度、尿素濃度、ウレアーゼ活性)と分解速度、処理効果の関係を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • 稲ワラに添加した尿素の分解速度は、水分と温度により異なる。添加した尿素が90%分解する日数は、水分50%で13、18、23度Cの場合、32、18、16日、水分30%では54、35、38日である(図1)。
  • 飼料成分は尿素処理により粗蛋白質と易消化性繊維成分が増加するが、アンモニア処理に比べてそれらの増加は少ない。また、尿素処理ワラは、乳酸よりも酢酸を多く含み、その他の有機酸生成も少ない(表1)。開封後の発熱を指標とした好気的変敗は、尿素処理によって著しく抑制される(図2)。
  • 尿素処理した稲ワラの採食量は、乾燥稲ワラやワラサイレージよりも多く、アンモニア処理よりは少ない。消化率は、乾燥稲ワラやワラサイレージより高まり、3%処理の場合の可消化養分総量は49%程度になる(表1)。
  • ワラ類のウレアーゼ活性は、牧草類や飼料作物類に比べて高く、尿素処理に適しているが、刈取り後の保存状態により活性値の変動幅はかなり大きい(図3)。
  • 尿素の添加方法は、生または予乾した稲ワラの尿素添加後の水分が40~60%になる量の尿素水溶液を動力噴霧器またはジョウロを用いて均一に混るように散布して、サイロ形態に応じた踏圧・密封を行う。

成果の活用面・留意点

尿素処理は、生または予乾した稲ワラ、麦ワラの保存性を高める処理法として適当である。尿素添加量は原物重量の2%(圃場稲ワラ10a当たり尿素30kg)程度を上限とする。寒冷期は尿素分解が遅いので貯蔵期間を3ヵ月以上とし、開封時にアンモニア臭の発生を確認する。給与は、他の飼料と併給しながら除々に給与量を増加する。

具体的データ

図1.尿素3%添加した稲ワラの水分、温度条件の違いによる尿素分解率の推移

 

表1.ワラ類の尿素処理による試料成分、発酵品質、採食量、飼料価値の変化

 

図2.尿素処理した稲ワラの開封後の発熱曲線

 

図3.ワラ類、牧草類、野草類のウレアーゼ活性

 

その他

  • 研究課題名:尿素処理によるワラ類の調製貯蔵技術と飼料価値の改善
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成2~(4)5年
  • 発表論文等:ワラ類の尿素処理による貯蔵性と飼料価値の改善、-低コストで簡易なワラ類の調製・貯蔵法-、牧草と園芸、42.8,1994