冷害稲ワラの飼料成分特性と飼料価値
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要約
冷害により不稔率が高かった稲ワラの飼料成分は、通常の稲ワラに比べ、デンプンと
単少糖類含量が著しく高く、繊維成分は少ない。不稔率91%の稲ワラでは
可消化養分総量(TDN)は67%に達し、不稔率と可消化成分含量あるいはTDN含量
には高い相関があった。
- 担当:東北農業試験場・草地部・飼料調製研究室
- 連絡先:019-643-3564
- 部会名:畜産(草地)
- 専門:動物栄養
- 対象:稲
- 分類:指導
背景・ねらい
平成5年に発生した水稲冷害は、東北・北海道地方に過去最大規模の被害を与えた。この冷害で不稔率の高かった稲ワラの飼料成分や飼料価値は、平年作の稲ワラとは異なることが予想された。そこで、不稔率の異なる稲ワラを収集して飼料成分を調査した。また、乾燥稲ワラと稲ワラサイレージを長製して消化率、栄養価値、採食量を明らかにした。
成果の内容・特徴
- 冷害稲ワラの飼料成分は、平年の稲ワラに比べてデンプンと単少糖類が著しく多く、粗蛋白質もやや高いが、繊維成分、粗灰分は少ない(表1)。
- 不稔率91%の稲ワラは、乾燥ワラ、サイレージのいずれもTDNが66%あり、不稔率40%の稲ワラではTDN55%である(表2)。また、不稔率と非構造性炭水化物(OCC)含量、TDN含量間には高い相関がある(図1)。
- 冷害稲ワラの採食性は、非常に良好であり、乾燥ワラ、サイレージの乾物摂取量はいずれも体重比2.0%(代謝体重当たり49~57g)に達する(表2)。
- 冷害稲ワラは生ワラとして密封貯蔵すれば良好な発酵品質のサイレージが調製できるが、開封後の好気的変敗が進みやすい。尿素2%を添加してサイレージ調製したサイレージは変敗を抑えることができる(図2)。
成果の活用面・留意点
- 冷害稲ワラは、乾燥ワラ、サイレージワラとして繁殖牛、肥育牛、泌乳牛、育成牛の良質粗飼料となり、採食性も良好である。
- 冷害稲ワラの飼料価値は不稔程度によって異なり、また粗蛋白質やミネラル含量は低いので、多給する場合には全体の飼料構成に注意を払う必要がある。
- 不稔の著しい籾付ワラの飼料成分や栄養価は、不稔籾自体の重量比がワラの15%程度であるので籾による影響の程度は小さく、籾無し稲ワラと同様に利用できる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:尿素処理によるワラ類の調製貯蔵技術と飼料価値の改善
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成2~(4)5年
- 発表論文等:なし