改良型嫌気培養装置を用いたインビトロ法による飼料の発酵・分解の解析

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要約

従来のインビトロ法の操作性と嫌気性を改良したインビトロ用嫌気培養装置を 試作した。本装置は、簡易に多数の試料を良好な嫌気下で経時的に培養できる性能が あり、分解率と同時に有機酸の生成様相を解析することが可能である。

  • 担当:東北農業試験場・草地部・飼料調製研究室
  • 連絡先:019-643-3564
  • 部会名:畜産(草地)
  • 専門:動物栄養
  • 対象:牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

飼料の反芻胃内での分解様相を生体外で簡易に再現する方法として、幾つかのインビトロ法が適用されているが、いずれも培養時の嫌気性の保持や操作性等に問題があり、有機酸生成の様相を解析するには不向きである。そこで、多点数の試料を良好な嫌気環境を維持しながら、培養液を経時的に採取できるインビトロ用嫌気培養装置を試作し、成分組成の異なる飼料の分解率と有機酸生成を解析して性能を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • 市販のガス培養装置の開閉扉をサンプリング用小扉付きグローブボックス型に改修し、庫内に培養管固定枠付き振とう器を設置することにより、最大36本の培養管(100ml容)を収容し、経時的な培養液の採取も可能である(図1)。
  • 庫内O2濃度は、N2の9分間連続通気後、N2.CO28:2の混合ガス2.5l/分で25分後に2%まで低下し、その後は0.5l/分通気で1.5%以下に保持できる(図2)。
  • トウモロコシ茎葉(粉砕粒度1mm)0.6gに0、15、30、45%の子実を添加した試料の総繊維(NDF)の分解率は、培養開始後S字型の推移で上昇し36時間後には50%に達するが、子実45%添加の分解率は常に低く推移する(図3)。
  • 揮発性脂肪酸(VFA)濃度は、栽培開始後48時間まで上昇し、子実添加が多いほど産生量が多い(図4)。また、酢酸/プロピオン酸の産生比は培養開始12時間後まで低下し、その程度は子実添加が多いほど大きい(図5)。

成果の活用面・留意点

  • 本法はインビトロで反芻胃発酵を再現できるため、少量多点数の試料による分解率や有機酸生成などの相互比較、またはルーメン内物質変換の解析に有効である。
  • インビトロ法は物理的消化や吸収機能がないので粒度の大きい試料や極端に粗農比の低い飼料の長期培養などには不適である。

具体的データ

図1.人工ルーメン用に改修した嫌気振とう培養装置概略図

 

図2.通気開始後の庫内酵素密度の推移 図3.総繊維 (NDF)分解率の推移

 

図4.揮発性脂肪酸(VFA)生成量の推移 図5.生成した酢酸/プロピオン酸比推移

 

その他

  • 研究課題名:反芻胃における粗飼料繊維成分の発酵特性の解明及びin vitro評価法の開発
  • 予算区分:科振調(重点基礎)
  • 研究期間:平成5年
  • 発表論文等:人工ルーメン法の応用に改良した嫌気ガス培養装置による飼料の発酵・分解様相の解析、日本畜産学会、 1994.3