シロクローバ小葉型放牧用新品種「ノースホワイト」

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要約

国内ではじめて育成した放牧専用の小葉型の新品種である。「ノースホワイト」は植物体 のサイズが小さくイネ科草種の生育を抑圧しないので安定した収量が維持できる。また 混播草地でクローバ率が適正に維持されるので施肥量が少なくてすみ低コスト草地 畜産への貢献が期待できる。

  • 担当:東北農業試験場・草地部・牧草育種研究室
  • 連絡先:019-643-3561
  • 部会名:畜産(草地)
  • 専門:育種
  • 対象:シロクローバ
  • 分類:普及

背景・ねらい

環境調和型の草地畜産を進めるためには窒素固定能および高栄養性を有するマメ科牧草シロクローバの利用が極めて重要である。これまでは放牧草地にシロクローバの外国導入品種を利用してきたが、これら品種は耐病性や越冬性等の環境耐性が劣り、放牧草地から早期に衰退する場合が多くみられるなど改良すべき点が多い。そこで国内の生育環境に適応し、混播適性に優れ、放牧に適する小葉型の新品種の開発を行い、本品種を育成した。

成果の内容・特徴

  • 小葉の大きさ、葉柄長及びストロンの太さ等植物休のサイズは「ケントワイルド」より大きく、「フイア」より小さい小葉型の系統である(表1)。
  • 開花始めは「ケントワイルド」及び「フイア」より1~2日早い(表1)。
  • 放牧を想定した刈取り(高さ5cm、年間8回)で、無窒素及び中窒素水準では中葉型は優占の傾向がみられ、多窒素水準では小葉型はクローバ率の低下を示すが、本系統は「マキバミドリ(OG)」の生育を抑圧せず、クローバ率は「フイア」と「ケントワイルド」に比較して安定である(図1)。
  • クローバ率(乾物)は「オカミドリ(OG)」あるいは「ホクシュウ(TY)」との混播では北海道地域で22%のクローバ率を示す。東北地域では「マキバミドリ(OG)」との混播で5ヵ年平均で16%を示す。クローバ率は年次の経過に伴い低下するが、5年目で16%以上に回復することから小葉型としては安定した系統である(図2)。
  • イネ科とシロクローバの合計乾物収量は北海道、東北地域のそれぞれの地域で小葉型標準品種よりやや多収性、中葉型標準品種と同等かやや低収である(表1)。
  • 耐雪性は中程度で「ケントワイルド」及び「フイア」より優れ、耐寒性は造成年の冬期に「ソーニャ」に比べやや劣る(表1)。
  • 放牧適性は「ソーニヤ」並である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 「ノースホワイト」は東北及び北海道地域の寒冷地に適応し放牧利用とする。イネ科牧草への生育抑制が小さいため晩生チモシー及び中・晩生オーチャドグラスとの混播に適し、適正なクローバ率を長期間維持することが可能である。東北地域においてはシバ草地への利用拡大も期待できる。
  • 植物体が小さいので造成年の秋には十分な生育を維持し、凍害及び菌核病の被害による枯死を防ぎ、個体密度を確保するよう注意する。

具体的データ

表1.ノースホワイトの特性比較 図1.窒素施用量、番草別クローバ率

 

図2.年次別年間平均クローバ率(%)

 

 

その他

  • 研究課題名:シロクローバ「東北21号」の育成
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5年度(昭和56~4年)
  • 発表論文等:樋口誠一郎・松村哲夫1994:窒素施用効果と品質間差異 東北農業研究46:155-156