桑葉付傷接種によるクワ縮葉細菌病の抵抗性検定法

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要約

クワ縮葉細菌病(Pseudomonas syringae pv. mori)の抵抗性は、 古条挿し木葉では温度25度C、湿度95%RH条件で接種7日目、 新梢水挿し葉では温度20度C、湿度90%RH条件で接種5日目で判定が可能であり、 抵抗性検定法として適用できる。

  • 担当:東北農業試験場・畑地利用部・畑病虫害研究室
  • 連絡先:0245-93-5151
  • 部会名:蚕糸
  • 専門:作物病害
  • 対象:工芸作物類
  • 分類:研究

背景・ねらい

寒冷地に広く適応し、病虫害抵抗性などを備えた良質多収の桑品種の育成が強く要請されている。クワ縮葉細菌病は、主に梅雨期に激発し、時には稚蚕用の桑葉の収穫が皆無となることもあり、夏秋蚕の飼育に甚大な被害を与える重要病害の一つである。しかし、その発生には桑品種及び地域間の差異が顕著であることが知られている。従来、本病の抵抗性検定は、圃場での発生実態調査や圃場での接種試験によって行われてきたが、環境条件などによる発病の不安定さや労力などから問題点が多い。そのため本病の抵抗性を早期に検定する手法を確立する必要がある。そこで、簡易で安定的な検定法として葉(第2~3開葉裏面)付傷接種法による検定を実施した。

成果の内容・特徴

  • クワ縮葉細菌病の圃場での発生実態調査は、罹病性2品種、抵抗性2品種を用いて行った。各品種の年次別自然発病率と圃場での葉付傷接種による発病度とはほぼ一致する傾向を示し、高い相関が認められた。接種による発病度(病斑の大きさ4段階)の判定から、本病に対する抵抗性は指数4.00以下であろうと考えられた(図1)。
  • 古条挿し木葉(第2~3開葉)を用いた室内での付傷接種(葉裏面、束針、病原細菌107/ml)後の温度と湿度条件は、温度25度C、湿度95%RH、接種7日後で病斑の形成が最も大きく、本法は抵抗性の検定に有効であった(図2)。
  • 新梢水挿し葉を用いた室内での付傷接種(温度20度C、湿度90%RH)による接種5日後の各品種の発病度は、圃場での接種による発病度とほぼ同様の傾向を示し、本法は抵抗性の簡易検定法として有効であった(表1)。

成果の活用面・留意点

桑のクワ縮葉細菌病抵抗性品種の育成、選抜に利用でき、育種の効率化が図れる。

具体的データ

図1.年次込圃場発生実態調査と接種による発病との関係 図2.古条挿木葉付傷接種後の温度・湿度条件と発病差異

 

図3.付傷接種による発病差異

 

その他

  • 研究課題名:桑の耐冷性、耐病性の早期検定法の開発
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5年度(平成元~5年)
  • 発表論文等:
    クワ縮葉細菌病菌接種による発病の品種・系統間差異、東北蚕糸研究報告、15号、1990。
    クワ縮葉細菌病抵抗性の簡易検定法、東北蚕糸研究報告、17号、1992。