天蚕の新しい飼料樹「蒿柳」の特性
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要約
天蚕の新飼料樹「蒿柳」(中国原産の柳の一種)は、生育速度が速く、
さし木発根性が極良のため、さし木による促成樹園地の造成が可能で、
天蚕の飼料としては、クヌギに比べ飼育経過、繭質等が優れており、
天蚕繭の安定大量生産が図られる。
- 担当:東北農業試験場・畑地利用部・養蚕研究宝
- 連絡先:0245-93-5151
- 部会名:蚕糸
- 専門:育種・栽培
- 対象:工芸作物
- 分類:研究
背景・ねらい
天蚕は日本原産の大型絹糸昆虫で、この幼虫が吐く天蚕糸は太く強伸性があり優美な光沢と野趣に富み高級織物などに利用されてきた。東北地方には広大な山林原野や未利用地があり、天蚕糸による新需要の創出と中山間地域の複合農業経営の振興を図るため、天蚕の大量飼育技術の開発が強く望まれている。従来、天蚕の飼料樹にはクヌギ・コナラ等が使われているが、飼育林の造成や初期収量の生産性等に難点があることから、これらに代わる新飼料樹「蒿柳」の栽培特性及び天蚕飼育による飼料的評価を行い、天蚕繭の安定大量生産の確立を図る。
成果の内容・特徴
- 蒿柳は、クヌギやコナラに比べ春の発芽が早く、伐採後の再生力が強く、生育速度が速いことから、天蚕の年2回育に対応した収穫体系が容易にできる。また、さし木発根性が極良のため、さし木による促成樹園の造成が可能である。
- 蒿柳とクヌギ及びコナラの10a当り葉量は、植付け3年目の6月の収穫では蒿柳370kg、クヌギ154kgで、蒿柳はクヌギの2.4倍の収量が得られ植付け3年目で天蚕の飼育が十分可能である。
- 天蚕の飼育では、蒿柳を給与した幼虫は発育経過がクヌギを給与したものに比べ数日早く、繭質等も勝り、蒿柳は天蚕の飼料としての飼料的価値が高い。
成果の活用面・留意点
- 蒿柳は湿潤な土壌を好むため、過度の乾燥した土壌には栽植しない。
- 蒿柳に寄生するアブラムシの棲息とアリの侵入を防ぐため、薬剤散布による徹底した防疫対策を講じること。
具体的データ


その他
- 研究課題名:天蚕新飼料樹の特性解明
- 予算区分:大型別枠「新需要創出」
- 研究期間:(平3~8年)~5年
- 発表論文等:天蚕新飼料樹「蒿柳」の特性、東北蚕糸研究報告、第17号、平成4年12月