土壌環境の違いによる土壌の窒素固定活性と窒素富化量の変動
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要約
寒冷地水田土壌の水稲作付け期間中の窒素固定活性と窒素富化量は光のある条件で増大し、セルロース添加による増大効果も大きい。また、稲わらや厩肥連用で窒素富化量が増大し、転換畑土壌ではセルロース添加による窒素富化量の増加が大きい。
- 担当:東北農業試験場・水田利用部・水田土壌管理研究室
- 連絡:0187-66-2775
- 部会名:生産環境
- 専門:土壌
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
水田では生物的窒素固定による土壌への窒素供給が重要とされ、これまで窒素固定活性を中心に研究が行われ、稲わらを施用すると窒素固定活性が増大することなどが明らかにされている。しかし、長期間にわたる水田土壌の窒素固定量を測定した例は少なく、土壌管理による変動についても明かではなかった。そこで、土壌管理の異なった圃場より生土を採用して試験管に詰め再び水田作土層に埋設する方法で、窒素固定活性と窒素富化量を調べ、東北地域水田における生物的窒素固定の意義について検討した。
成果の内容・特徴
- 水稲作付け期間中の窒素固定活性(アセチレン還元能)と窒素富化量(埋設前後の全窒素含量の差、見かけの窒素固定量)はどちらも明下で増加し、セルロース添加(乾土当たり1%)によってさらに増大する(図1)。
- 稲わらや厩肥連用ではセルロース無添加でも窒素固定活性と窒素富化量が増加するが、堆肥施用区では増加が小さい。セルロース添加によって窒素固定活性と窒素富化量は無添加よりも増大するが、厩肥施用区では逆に無添加よりも窒素富化量が減少する。また、窒素富化量はセルロースを添加した長期転換畑土壌が最も多い(図2、3)。
- 窒素固定活性は6月下旬頃が最も高く、9月上旬を過ぎると活性がほとんど無くなる。6月下旬の窒素固定活性から水稲作付け期間中の窒素富化量が推定できる関係が得られる(図4)。
- 転換畑土壌にセルロースを添加した場合、約50kgNha-1、セルロース無添加の稲わら連用水田土壌では約26kgNha-1の窒素が富化したものと試算される。
- 高温年の平成6年に比べて日照不足の平成7年では窒素富化量は減少し、セルロースを添加した長期転換畑土壌の見かけの窒素固定量は4割ほど少ない約30kgNha-1と試算される。この値は西南暖地で測定された窒素無施用水田での場合よりは多く、寒冷地水田においてもかなりの窒素固定による窒素供給があると考えられる。
成果の活用面・留意点
有機物施用によって寒冷地水田土壌でも窒素固定活性と窒素富化量が増大することが明らかになったが、生態系に調和した低投入の水稲栽培の推進に役立てるには、土壌の種類や肥沃度の違い、あるいは転換畑土壌の変化などとの関係を明らかにする必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:水田土壌の生態的特性の解明と制御技術の開発
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成7年度(平成6年~10年)
- 発表論文等:土壌管理法が土壌の窒素固定能に及ぼす影響,日土肥学会1995年度大会講演要旨41,152,1995