アメダス地域気象情報に基づく冷害危険度地帯別水稲作柄判断モデル

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

水稲収量の水準とその変動から作成した冷害危険度地帯区分を基礎にすると、アメダス地域気象情報の旬別最高気温と最低気温、日照時間を用いて収量測定の重回帰モデルが作成できる。このモデルにより、作柄の概況ならびに気温と日照時間の影響度を数量的に把握できる。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・作業システム研究室
  • 連絡:0196-43-3536
  • 部会名:やませ環境,水稲
  • 専門:農業気象
  • 対象:稲類
  • 分類:指導

背景・ねらい

近年の異常気象により東北地域の水稲作柄は著しく不安定なために、行政・普及・生産者からは冷害の早期警戒・予察の総合的な地域管理システムの構築が強く要請されている。そのため、アメダス地域気象情報利用システムとそれを用いた作柄診断システムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 市町村別水稲収量(1972~94年)を用いて、収量の水準とその変動に特徴づけられる冷害危険度地帯区分を作成した。これは日本海側と太平洋側の気象的な稲作立地の特徴を反映する(図1)。
  • 日照時間の測器が切り替わった1986年~1994年までの旬別最高気温、最低気温、日照時間の3要素を用いると、アメダス地点の水稲収量を測定するための重回帰モデルが作成できる。本モデルによると、地帯内の収量を精度高く推定できる(表1)。
  • 本モデルは旬別気象3要素が収量の増減に及ぼす影響の程度を数量的に評価できる。また、旬別気象3要素の平均値を基礎として、暦日を追って収量の概況を監視でき、平均的収量(最低と最高収量を除いた平均値)に対する作柄指数(作況指数とは異なる)として数量的に推定できる(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 表計算ソフトに平均的気象データとモデル式を組み込むことで容易に利用できる。また、気象庁による1ヶ月予報は本年3月から毎週発表され、内容も現行の気温、降水量に加えて日照時間も予測されるため、1ヶ月予報に基づいて作柄を予測できる。
  • 過去のデータに基づく統計モデルであるため、現行の生育調査結果と照合して利用することが望ましい。
  • 本モデルは毎年更新されるべきものであり、それにより気象変動や技術変化に対応できるものと考える。
  • 日照時間は回転式日照計の値に変換して使用する。

具体的データ

図1.収量水準とその変動による冷害危険度地帯区分表1.収量予測モデルの精度

 

図2.地帯1.5における1993年と95年の平均作柄指数の変化

 

その他

  • 研究課題名:水稲冷害の早期警戒のための監視・意志決定支援システムの開発
  • 予算区分:重点基礎
  • 研究期間:平成7年度
  • 発表論文等:東北地域における冷害危険度地帯別水稲収量予測モデル,日本作物学会講演会第201回大会講演要旨,174-175,1996.