大豆の播種時期とウコンノメイガの発生及び被害との関係

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要約

ウコンノメイガの被害は大豆の播種時期と大きな関係があり、播種時期を遅らせることによってその被害を軽減できる。また被害の程度は産卵数の多少に起因し ており、産卵数の多少は外観的には葉緑素濃度(SPAD値)で表現される誘引物質等の化学物質の質的あるいは量的な違いによってもたらされるものと推定さ れる。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・水田虫害研究室
  • 連絡:0187-66-2774
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物虫害
  • 対象:豆類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ウコンノメイガは生育中期の大豆を加害し、時として坪枯れ状の大被害をもたらす食葉性の害虫である。本虫による被害の発生が大豆の栽培様式と密接に関係しているらしいことは、既に富山県等で報告されている。ここでは、大豆播種の早晩、即ち植物体の生育ステージと本虫による被害発生との関係を調査し、被害回避のための播種時期を明らかにするとともに、被害発生の多少に影響を及ぼす要因の解析を行った。

成果の内容・特徴

  • ウコンノメイガ幼虫数及び全葉数に占める被害葉(巻葉:幼虫の被害)の割合を7月下旬に調査した結果、生育より進んだ早期播種区(5月中旬播種)において幼虫数、被害ともに多かった(図1)。
  • 成虫密度を叩き出し法により調査した結果、やはり早期播種区において高く、産卵選択が起きている可能性が示唆された(図2)。
  • その原因の一つとして、葉色の関与が考えられたため、圃場内に栽培されている24品種について、葉緑素濃度(SPAD値:葉緑素計SPAD-502,MINOLTAで測定)と被害葉率との関係を調べたところ、有意な正の相関が確認された(図3)。
  • さらに、根粒菌欠失大豆を窒素施肥量を変えて栽培し、植物体の色に変化を付けることによって、虫数及び被害量に対する葉色の影響を調査した結果、SPAD値の高い植物体に幼虫が多く被害が集中することを確認した。
  • 窒素施肥量の異なるポット植えの根粒菌欠失大豆を網枠内に設置し、ウコンノメイガ成虫を放飼する方法により植物体の色と産卵数との関係を調べた結果、やはりSPAD値の高い植物体に成虫が集まり産卵数が多くなることを確認した(図4)。
  • 葉色の影響については、植物体をガーゼで被覆した場合でもSPAD値の高い植物体側に成虫がより集中することから、色の濃淡そのものが影響しているのではなく、植物体由来の誘引物質をはじめとする化学物質の質的あるいは量的な違いが関与しているものと推定される。

成果の活用面・留意点

ウコンノメイガの発生が多い地域では、統一的な早期播種を避け、播種時期を分散させることによって被害の軽減を図ることができる。ただし、極端な遅播きは収量減につながるので、播種時期の決定に際しては十分な注意が必要である。

具体的データ

図1.大豆の播種時期とウコンノメイガの幼虫密度・被害との関係

 

図2.叩き出し法により調査した成虫密度の推移

 

図3.葉色の濃炎と被害葉率との関係

 

図4.葉緑素濃度(SPAD値)と産卵数との関係。

 

その他

  • 研究課題名:輪換水田に発生する害虫の生態
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年(平成3年~8年)
  • 発表論文等:
    ウコンノメイガに対する遅播き大豆の被害抑制効果とその要因解析.
    第40回日本応用動物昆虫学会講要,P.135,1996.