交雑種を用いた黒毛和種の父牛評価

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要約

黒毛和種(父牛)とホルスタイン種(母牛)から生産した交雑種データを用い、遺伝的パラメターおよび父牛の育種評価を推定する。また増体量、枝肉単価について高い遺伝率が得られることから、交雑種を用いた黒毛和種の父牛評価が可能である。

  • 担当:東北農業試験場・畜産部・家畜育種研究室
  • 連絡:0196-43-3541
  • 部会名:畜産(家畜)
  • 専門:育種
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

黒毛和種の父牛の選抜には、純粋種産子を用いた後代検定の情報を用いる。しかし純粋種の子牛価格は高く、繁殖農家の規模も小さい。一方、交雑種は安価であり、酪農家1戸当たりの飼養頭数は大きい。このことから交雑種については、特定の父牛の産子を同時期に数多く得ることが可能である。また、肉質の評価については、黒毛和種の母牛から得た純粋種より、変異の小さいホルスタインを母牛に持つ交雑種を用いた方が、より正確な父牛評価となる可能性がある。以上の理由から、交雑種データを用いた黒毛和種父牛の選抜が可能か検討した。

成果の内容・特徴

  • 8頭の黒毛和種を父に持つホルスタイン種との交雑種341頭のデータを用い(表1)、導入から出荷までの一日平均増体量(DG)および脂肪交雑を評価するBMSナンバー(BMS)、枝肉1kgの単価(枝肉単価)の3形質について遺伝的パラメターを推定した。分析には多形質の種雄牛モデルによる制限最尤推定法を用いた。
  • 種雄牛の育種価の幅はDG、BMS、枝肉単価について、各々-174.7~152.8g、-0.272~0.146、-403.3~292.1円/kgであった(表2)。
  • DGおよびBMS、枝肉単価の遺伝率は、各々0.810および0.111、0.532であった。遺伝相関はDGとBMS間では-0.794、DGと枝肉単価間では-0.353と負の値であり、BMSと枝肉単価間では0.849と大きな正の値が得られた(表3)。

以上より、本研究で得られた父牛の育種価の変異と遺伝率を見る限りでは、交雑種を利用した黒毛和種の後代検定は可能である。

成果の活用面・留意点

今後、交雑種を用いた改良事業について検討する必要がある。また、本研究では組合せの効果、母性効果、雑種強勢などの量的遺伝子以外の効果については考慮していない。今後はこうした課題についての研究も必要であろう。

具体的データ

表1.測定値の平均及び標準偏差、最大値、最小値

 

表2.交雑種データを用いた黒毛和種父牛の育種価推定値(遺伝的能力)

 

表3.交雑種データにおける主要な形質の遺伝率、遺伝相関

その他

  • 研究課題名:肉用牛の効率的な改良方法
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5~7年(5~9年)
  • 発表論文等:黒毛和種とホルスタイン種の交雑種を用いた産肉形質の遺伝的パラメターの推定;日畜会報,1091-1022,(66),1995