東北地域における籾の常温除湿乾燥と加温乾燥の特性比較
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要約
常温除湿乾燥は食味や胴割れ防止など米の品質向上に効果があるものの、東北地域の気象条件では乾燥速度が低く乾燥コストも高くなる。送風温度が30°C程度の比較的低い加温乾燥は常温除湿乾燥と同等の品質が得られ、乾燥能率向上に役立つ。
- 担当:東北農業試験場・地域基盤研究部・施設工学研究室
- 連絡:0196-43-3463
- 部会名:作業技術
- 専門:機械
- 対象:稲類
- 分類:指導
背景・ねらい
米の乾燥作業において、高品質化のために除湿乾燥など新しい乾燥方式が開発され、積極的に地域の乾燥調製施設に導入されている。しかし除湿乾燥は気象条件により乾燥能率が大きく異なり、材料の水分条件・乾燥コスト等を考慮した最適運転条件は十分に解明されていない。そのため東北地域の気象条件における高品質乾燥調製技術を早期に確立し、乾燥調製施設に反映させる必要がある。そこで、常温除湿と加温方式による乾燥特性および品質に及ぼす影響について比較した。
成果の内容・特徴
- 除湿装置は吸気温度が15°C以下になると、除湿能力が大幅に低下する。そのため東北地域における籾乾燥では低温時に十分な乾燥速度が得られない(表2)。
- 常温除湿乾燥区の乾減率は0.2~0.3%/hrで、30°C程度の比較的低い温度の加温乾燥に比べても乾燥速度は低い(図1)。
- 脱水経費(籾から水1kgを除去するのに要する電気および灯油の経費)で乾燥コストを比較すると、加温乾燥では20円/kg以下であるのに対して、常温除湿乾燥では110~130円/kgと7倍以上のコストを要する(図2)。
- 胴割率は送風温度35°Cで2%程度、45°Cで10%程度と、送風温度が高くなるにつれて発生割合も高くなる。ただし、常温除湿乾燥および送風温度が30°C程度までの比較的低い温度の加温乾燥であれば胴割れはほとんど発生しない。
- 食味を官能検査の総合評価項目で比較すると、送風温度が高くなるにつれて評価が下がる傾向にある(図3)。
- 貯蔵玄米の脂肪酸度の増加は常温除湿が最も少ないものの、増加量は大差なく、乾燥温度の影響は小さい(図4)。
成果の活用面・留意点
- 除湿乾燥方式による共同乾燥施設の作業の効率化やコスト低減のための資料となる。
- 除湿乾燥装置は気象条件により除湿性能が異なるため、導入に際しては使用地域や使用時期による性能を把握する必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:高品質化のための乾燥調製技術の確立
- 予算区分:国県共同(地域先導)
- 研究期間:平成7年度(平成5~7年)
- 発表論文等:除湿方式と温風方式による籾の乾燥特性の比較,農機学会東北支部報,42,53~58,1995