やませ日における日平均メッシュ気温推定法
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要約
夏期に、東北地方太平洋沿岸を中心に吹走するやませ下において、従来法より高精度に日平均メッシュ気温が推定できる方法”やませメッシュ気温推定法”を開発した。
- 担当:東北農業試験場・地域基盤研究部・気象特性研究室
- 連絡:0196-43-3461
- 部会名:やませ環境
- 専門:農業気象
- 対象:稲類
- 分類:研究
背景・ねらい
東北地方では、梅雨期から盛夏期にかけてやませとよばれる東風が吹き、農作物はしばしばその低温により被害をこうむる。このような冷害の被害解析は、気温を1km2メッシュごとに推定し、農作物の生育と対応づけて行われるが、より高精度の気温推定値が求められる。そこで、やませ吹走日における1km2メッシュ日平均気温実況値を平年偏差法(従来法)よりも高精度で推定できる「やませメッシュ気温推定法」を開発する。
成果の内容・特徴
- やませの定義
八戸の気象官署の一日24回の風向の3/4以上がN~SSEであり、かつ日平均気温の平年偏差が0°C以下の日をやませ日として判定したところ、1979年から1993年までの15年間で397日が該当した。
- やませメッシュ気温の推定方法
やませメッシュ気温は、1やませ吹走下で形成される特徴的な地上気温分布に深く関わる地形因子と、2三沢、仙台、秋田の3ケ所で行われている高層気象データを用いて作成した気温内挿値を説明変数とし、アメダス気温を目的変数として重回帰分析を行うことにより推定される。
- やませメッシュ気温の特徴
- 397例のやませ日のアメダス気温推定値について標準誤差をみたところ、大部分が1°C以下となり、高精度で気温実測値が予測できた(図1)。西風が広い範囲で吹走してやませの侵入が局地的な場合には標準誤差が大きくなる。
- やませメッシュ気温推定法と従来法による気温推定値を比較すると、太平洋側の海岸から10km前後まで前者の方が高く、それより内陸で低い(図2)。また、奥羽山脈の東斜面で前者の方が低いなどの地域的な改良点が認められる。
- 北緯39.4 ゚に沿った断面(図2中A-B)をみると、やませメッシュ気温の方が東向き斜面での低温をよく再現しており(図3中X)、また標高の変化ともよく対応している(図中Y)。
- やませメッシュ気温推定法の決定に用いなかった気温実測値と推定値との差をみると、八戸八幡観測点の例では平均で0.52°Cとなり、従来法の場合の約半分となる(図4)。
成果の活用面・留意点
やませによる東風が強く、低温であるほどやませメッシュ気温推定法の推定精度は高くなる。やませ日以外の場合の推定精度は未検討であり、利用に際しては注意を要する。
具体的データ




その他
- 研究課題名:東北地方における異常気象及び障害型冷害の解析
- 予算区分:冷害予測
- 研究期間:平成7年度(平成6年~9年)
- 発表論文等:重回帰式を用いたヤマセメッシュ気象データの作成,日本気象学会1995年度秋季大会予稿,p165,1995.